世界の中心で愛を叫んだけもの

SF

こんにちは。ポメラニ・アンパンです。凄く久しぶりの更新となります。

ここ最近、ちょっと自分の生活周りでドタバタしていて、なかなか本を読むのにまとまった時間が取れませんでした。

人間生きていると予想だにしなかったことや、「こんなはずじゃなかった!」てな事、ありますよね?!

僕も実は転職活動していて、内定をいただいた会社に出社したのですが・・・。

事前に説明を受けていた内容と、入社してからの内容に大きな乖離があって、とても納得できる内容ではなかったため、そこを辞してまた転職活動をするという・・・回り道をしていました。

幸い、なんとか次の働き口が見つかったので、ホッとしているところ。

今回はそんな状況の中、少しずつ読んでいた一冊を紹介します。この作品は僕が学生の頃に買って、一度読んではいるのですが、その時はいまいちピンと来なかったのです。

その後長年本棚の肥やしにしていたのですが、ふと「もう一度読んでみるか!」と思い手に取ったのです。

するとどうでしょう!読書経験値が貯まったからでしょうか?あるいはSF慣れしたからなのか、今回はこの作品を素直に面白い!と感じることができました!

これが再読のメリット、発見ですね!なぜ今回再読しようかと思ったかは、本作があまりにも有名な作品、すなわちハーラン・エリスンの短編集『世界の中心で愛を叫んだけもの』だからです。

この本を読んだきっかけ

学生だった頃に手を取ったので、記憶が定かではありませんが、新世紀エヴァンゲリオンの最終話のタイトルが確か、『世界の中心でアイを叫んだけもの』が脳のどこかにあり、たまたま書店で見かけた本書のタイトルに反応したからだと思います。

あらすじ

著者の作品15点が納められた短編集。全作品を通して共通するテーマは、暴力であり退廃的な近未来、そして人の持つ光と闇。

以下、文庫本背表紙より抜粋


人間の思考を超えた心的跳躍のかなた、クロスホエン。この世界の中心より暴力の網は広がり、全世界をおおっていく・・・・・・。

暴力の神話、現代のパンドラの箱を描いてヒューゴー賞を受賞した表題作をはじめ、核戦後、瓦礫の山と化したシティを舞台に力で生きぬくチンピラ少年たちと言葉を話す犬との友情を描く「少年と犬」など短編15篇を収録。米SF界きっての鬼才ハーラン・エリスンのウルトラ・ヴァイオレンスの世界


<収録作品>

・世界の中心で愛を叫んだけもの (The Beast that Shouted Love at the Heart of the World)

・101号線の決闘  (Along the Scenic Route)

・不死鳥 (Phoenix)

・眠れ、安らかに (Asleep: With Still Hands)

・サンタ・クロース対スパイダー  (Santa Claus vs. S.P.I.D.E.R.)

・鋭いナイフで  (Try a Dull Knife)

・ピトル・ポーヴォブ課  (The Pitll Pawob Division)

・名前のない土地  (The Place with No Name)

・雪よりも白く (White on White)

・星ぼしへの脱出  (Run for the Stars)

・聞いていますか?  (Are You Listening?)

・満員御礼  (S.R.O.)

・殺戮すべき多くの世界  (Worlds to Kill)

・ガラスの小鬼が砕けるように  (Shattered Like a Glass Goblin)

・少年と犬  (A Boy and His Dog)

この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)

雰囲気

近未来、退廃的な世界、麻薬、宇宙の深淵、地球外の星、宇宙進出、過酷な環境、サバイバル、宇宙人、侵略、大量虐殺、化物変異、友情・・・。

どんなに世界が進もうと「生き物」そのものの本質は生存本能における暴力なしでは語る事はできないのか。生きるとは、自らの力で他を圧倒するしか道はないのか。地球人、宇宙人、生きとし生けるものが、あくなき生への渇望を暴力によって切り開くエピソードの数々。

読みやすさ:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

冒頭の「世界の中心で愛を叫んだけもの」が、唐突に読者を交叉時点クロス・ホエンに放り込んでくるので、ここが第一ハードルにして本作最大の難関!!ここさえ突破できれば後の作品は比較的スラスラ読めてしまう。

ワクワク度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ワクワクするというより、どちらかというとジワジワくる作品の方が多い。

ハラハラ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ほとんどの作品が、何かに追い詰められていたり、追い詰めたりするシーンがあり、常にハラハラできる。

食欲増幅度:−1 ☠️

食欲減る描写の方が多いかも・・・。

胸キュン:2 ⭐️⭐️

少年と少女が登場する作品はあるのですが・・・。

ページをめくる加速度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐⭐️

先述した「世界の中心で〜」さえ読めれば他は読みやすく、展開も早い。また、先が気になるので、自ずとページをめくってしまう。

希望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

人は案外あさましく、どんな環境でも生きていこうとする意志さえあればなんとかなる、と感じることができた。

絶望度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

作品によっては、いわゆるゲームで言うところの「バッドエンド」そのものの描写もあり、絶望度指数は高い。

残酷度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

刺す、撃つ、弾ける、食べられる、爆発する、引き裂かれる・・・様々な残酷シーンが目白押し。

恐怖度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

作品にもよるが、状況的に恐ろしいもの、敵対存在の描写が恐ろしいものなど。

ためになる:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

想像力は鍛えられる。見たことのない世界、見たことのない存在。

泣ける:1 ⭐️

正直泣ける描写は少ない。

読後感:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

「ふう・・・」と一息つく感じ。最後に収録されている「少年と犬」を読み終えると、なんとも言えない感じがあるが、少しだけ自分が人間の暴力性や宇宙の深淵の一端に触れたような気がして刺激を感じた。

あとがきが著者の事をいろいろ書いており、「癒し」、「口直し」効果あり。

誰かに語りたい:1 ⭐️

僕の拙い語彙力だと語る術が見つからない。読んでない人に勧めるのも厳しい作品だと思うし。

なぞ度:1 ⭐️

特に気になった部分は無かった。

静謐度:1 ⭐️

不思議と静寂な空間であるはずの交叉時点でも文体のせいか、熱があり静謐さはあまり感じなかった。

笑える度:1 ⭐️

笑うシーンはなかったかなぁ。

切ない:3 ⭐️⭐️⭐️

作品によっては少し切なさの残るものもある。

エロス:2 ⭐️⭐️

少々。

データ

タイトル世界の中心で愛を叫んだけもの
原作タイトルTHE BEAST THAT SHOUTED LOVE AT THE HEART OF THE WORLD
著者ハーラン・エリスン (Harlan Ellison)
訳者浅倉久志、伊藤典夫
発行元早川書房
コードISBN4-15-010330-5

まとめ

読みました〜!十数年ぶりに読みましたが、やっぱりとんでもない作品でした!

まあ、エグいこと、エグいこと!

各作品それぞれでシチュエーションや内容はもちろん異なるのですが、一つとして心休まる作品はありません(爆)!!スリリングで、暴力的で、退廃的で、ミステリアスで、そして結末は物悲しかったり、悲劇的なものがほとんど。

でも、僕はこのような作品も好きです。人間とは、何も美しいものだけでできてはいません。

人を騙したり、殴ったり、蹴落としたり、争ったり・・・これらは人間なら誰しも持ちうる側面だと思います。

僕は人間の美しい部分をクローズアップさせた作品よりも、やはり本作のような「人間の闇の部分」とでも言いますか、これらを表現した作品に惹かれます。まあ、これは僕の性格故でしょう。

基本的に本作は暴力的な要素が多いのですが、胸糞悪い話ばかりではなく、若干スカッとするような読後感を得られる作品もあります。

印象に残った作品といえば、近未来で繰り広げられる不毛なカーチェイス「101号線の決闘」や、エンタテインメント宇宙人集団による衝撃的な結末を描いた「満員御礼」。さらには孤高の戦いを続けている一人の男を描いた「殺戮すべき多くの世界」、そして少年と犬の絆が一人の少女にどう影響されるかを描いた「少年と犬」ですね。

気に入ったフレーズ・名言(抜粋)

狂気は生きた蒸気だよ。力だ。それをびんに閉じこめることはできる。ただし、いちばん強力な悪霊を、いちばん栓の抜けやすいびんに閉じこめるようなものだがね。

センフ
世界の中心で愛を叫んだけもの p.34

子供は、ふしぎなものや、未知なものや、魔法の世界に夢中になる。そして、一生それを失わない。考古学の道に進んでからはも、それはつねに胸のときめく手がかりであり、参考資料であり続けた。


不死鳥 p.65

彼は才覚をたよりにこれまでの人生を生きてきた。いつも、誰かの譲ってくれた一センチにつけ込んで、こすっからく一キロメートルをものにしてきた。しかし、こんどばかりは、その一センチがどこにもない。

星ぼしへの脱出 p.216

ベンノ・タラントは、今の自分を評価してみた。彼の中にある悪-それがそこにあること、すべての表面的な厭らしさよりもずっと底深いところでじくじく化膿していることは、だれよりも彼自身が認める-は、なにひとつ変わったわけではない。それは善に変わりはしなかった。これだけの苦難を通じて、彼の考えを円満にする、ということもなかった。それは、彼をよりたくましくしただけなのだ。悪そのものが成熟したのだ。

星ぼしへの脱出p.247

世界の殺戮を業とするこの男にとって、来訪者あるいは潜在的依頼人は、すべて征服された世界から送られてきた暗殺者の可能性を持っている。したがってジャレッドは、復讐から身を守るあらゆる手段をこうじてきた。

殺戮すべき多くの世界 p.319

おれは動けなかった。動けなくなっているのに、ふいに気づいたのだ。きれいといったら、最高にきれいなんだ、ここにつっ立って見てるだけなのに、今までなかったほどビンビン感じてくる。細くくびれたウエスト、くりっと丸いヒップ、両手が髪をかきあげるとき、きゅんともちあがるおっぱい。つっ立って、彼女のやることを見てるだけでこうなんだから、ほんとおそろしくなってくる。なんていうか、つまり、なにからなにまで女なのだ。うっとりしていた。

少年と犬 p.372

愛って何か知ってる?

知ってるとも。少年は犬を愛するものさ。

少年と犬 p.372

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