リヴァイアサン -クジラと蒸気機関-

SF

こんにちは、ポメラニ・アンパンです。6月も終わりに近づき、だいぶジメジメしてきたのではないでしょうか。ジメジメといえば湿気。湿気は嫌ですね。僕、ポメラニ・アンパンは暑がりで汗かきなので、ことのほか夏が嫌いです。断言します。超嫌いです!

でも同じように湿気をもたらす蒸気は、僕ポメラニ・アンパンにとってちょっと意味合いが違います。蒸気といえば蒸気機関!蒸気機関といえばスチームパンクだからです(爆)!

さてさて、今回ご紹介するのは『リヴァイアサン -クジラと蒸気機関-』です。アメリカの作家、スコット・ウエスターフェルドさんという人が書いたスチームパンク・ファンタジー。この作品は3部作になっており、本作はその第1作目。後に続く2作は『ベヒモス -クラーケンと潜水艦-』、『ゴリアテ -ロリスと電磁兵器-』です。

読んだきっかけ

僕としたことが、本の帯の紹介に釣られてしまいました。なんせあの瀬名秀明氏が《ぼくらも駆けよう、空を飛ぼう!》と!そりゃ手に取りますって。

あらすじ

第一次世界大戦をモデルとした世界観に、大胆なアレンジを加えた冒険ファンタジー。1914年、遺伝子操作した生物を基盤として成立した英国をはじめとする勢力《ダーウィニスト》と、機械工学を発展させ、社会を構築したドイツをはじめとする勢力《クランカー》。両者の力は拮抗しており、まさに一触即発状態だった。

そんな中、オーストリア大公夫妻が毒殺される。大公の息子アレックは、大公に仕える者達と共に逃亡する。アレックは《クランカー》側の社会で育った。それゆえ逃亡にはウォーカー(鋼鉄製の二足歩行戦闘機械)を操縦し、追ってから逃れるために進み続ける。

ポメラニ・アンパン
ポメラニ・アンパン

アレックのストーリーは、史実である《サラエボ事件》がモチーフ。史実ではフランツ・フェルディナンド大公とその妃ゾフィー・ホテクの暗殺は白昼に起こったが、本作では夜に毒殺されている。

筆者は、この作品を夜から始めたかったから、との事。(作者あとがきより)

デリンは英国海軍航空隊に憧れ、志願する《ダーウィニスト》陣営の少女。しかし、軍は女性を隊員と認めないため、男装し名を《ディラン》と偽って入隊。同年代の少女の平均身長より高いデリンだが、声色、歩き方、言葉遣い、その他仕草を兄から教わり、からくも軍に入隊することができたのだ。

物語はアレックとデリン、二人の視点を読者が追うように進んでいく。

アレック達が立て籠もっていた場所の付近に、デリン達の乗るリヴァイアサンが不時着した。その際、敵であるにも関わらず助けに行ったアレックは、デリンに出会う。もちろんこの時アレックはデリンが実は女の子だという事を、知るはずもない。この後、アレックとデリンは行動を共にする事になる。

果たして戦争の行く末、二人の関係性はどうなっていくのか・・・。

この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)

雰囲気

それぞれ対立する陣営に配置されたアレックとデリンの物語。陸海空、世界中を舞台とした大冒険戦争ファンタジー。暗すぎず、かといって恋愛を主軸に置いているわけでもなく、男性読者、女性読者共に読みやすいはず。

読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

僕らが生きる現実世界には存在しない人造獣や機械兵器の造形を想像しながら読む必要はあるが、小林美幸氏の翻訳はとてもわかりやすく、加えて要所要所に挿絵があるのでスムーズに読める

ワクワク度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

《ダーウィニスト》、《クランカー》の戦いのゆくえ、アレックとデリンの関係などワクワク要素は多い。

ハラハラ度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

デリンの性別がバレないか。アレックに付き従う大人達は果たして何者か、とハラハラ度も多いにあり。

食欲増幅度:2 ⭐️⭐️

特に印象に残った食事シーンは無いかな。

冒険度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

アレックは巨大な機械を操縦しての逃亡劇。デリンは新米兵士ながらも右へ左へ大活躍。デリンが乗るリヴァイアサンが不時着した事で、アレックと遭遇。二人にとって波乱万丈の大冒険を僕ら読者も追う事ができる。

胸キュン:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

デリンのアレックへの秘めたる思い、アレックのデリンヘの態度がヤキモキさせる。

血湧き肉躍る:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

本格的なぶつかり合いはまだ無い。しかし、手に汗握るスリリングなシーン多め。

希望度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

デリンのポジティブさが光るし、敵対→共闘という関係性が希望を感じる。

絶望度:2 ⭐️⭐️

アレックにとっては絶望的な状況だが、デリンの快活で明るい性格が絶望感を和らげる。

残酷度:2 ⭐️⭐️

残酷というより人造生物の描写で、人によってはグロテスクに感じるかも

恐怖度:1 ⭐️

恐怖を感じるシーンはほとんど無い

ためになる:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

史実の第一次世界大戦をおさらいしたくなる。特にサラエボ事件前後。

泣ける:2 ⭐️⭐️

アレックの心情やヴォルガーのアレックに対する忠誠心など響くところはあるが、泣けるかどうかは別。

ハッピーエンド:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

読後感はまあまあ。物語自体は次巻に続くが、本書では『どうなるんだろう?』という期待感を残して終わっている。

誰かに語りたい:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

機械と生物、皇位継承権を持つ少年と男装の少女・・・語るネタはふんだんに散りばめられている。

なぞ度:3 ⭐️⭐️⭐️

多くの謎がまだ本作では残されている。バーロゥ博士の目的がこの時点ではわからない。そして卵の中身も。

静謐度:1 ⭐️

物語の展開は早く、特に静かな雰囲気は無い。デリンがよくしゃべるし周りの人物との会話からも、賑やかというより騒々しいと言った方が近いかも。しかし、それが不快ではないのだ。

笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️

デリン視点ではクスッと笑えるシーンは多少ある。

切ない:2 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

デリンが自分の正体を告げたくても告げられないもどかしさ。

エロス:1 ⭐️

無い。

データ

原作タイトルLEVIATHAN
日本語タイトルリヴァイアサン  – クジラと蒸気機関 –
著者スコット・ウエスターフェルド (Scott Westerfeld
訳者小林美幸
発行元早川書房
コードISBN978-4-15-011933-1

まとめ

人造の生物に蒸気機関、男装の少女に皇位継承権を持つ少年。まるでロールプレイングゲームのような世界観と人物造形にときめかずにはいられません!また、史実を絶妙なバランスで取り入れた設定が、歴史のIFを読む感覚を与えてくれるので、それはそれで楽しいです。

遺伝子を操作して生物同士を掛け合わせて使役している《ダーウィニスト》陣営。狼と虎を掛け合わせた生物や、空を飛ぶための生物、敵を攻撃するコウモリ型生物、人の伝言を運ぶためのトカゲ、クジラの遺伝子をベースに様々な生物を混合して作られた巨大浮遊戦艦リヴァイアサン・・・様々な架空の生物が、所狭しと登場しデリン達の冒険を彩る。彼らの姿、生き様を想像するだけでワクワクしますね。

一方で、機械の発展に特化した《クランカー》陣営。地上を走る巨大戦艦、二足歩行で動ける操縦型兵器などが、《ダーウィニスト》に対抗すべく駆動する。こっちも、ロボットものが好きなポメラニ・アンパンにとってはたまらない設定でしたね!アレックに付き従うのが、ウォーカーを巧みに操縦したり、修理もこなす老人ってのも良いですわ!

このように、生物VS機械陣営の構図がなかなか面白く、それがそのまま第一次世界大戦にリンクしているのがうまいな、と思います。

アレックとデリン以外にも様々な登場人物がいます。中でも、アレックに付き従うヴォルガー伯爵はなかなかのくせもの。もともとアレックの父である大公に仕えていて、アレックのフェンシング指南役。大公が殺された後は、アレックを逃がすためあらゆる手段を行使。時にはデリンすら利用する酷薄な行動も辞さないというニヒルな男です。

そしてもう一人、女博士のバーロゥ。物語途中からデリンらが乗るリヴァイアサンに、《ある重要なもの》を運ぶために搭乗してくるのですが・・・。《ダーウィニスト》であり、科学者であり、外交などの仕事をもやってのける凄い人。実在した人物をモデルにしているそうです。

壮大な物語の幕開けとなる本書。三部作の中の第一部という事で、まだまだ序盤なんです。それにも関わらず、濃密な設定とテンポの良いストーリーのおかげでページをめくるスピードも上がります!

架空の生物や機械などの描写が多いのですが、それを補完する挿絵がところどころ挿入されているのが素晴らしい〜!!

あと、スコット・ウエスターフェルドさんのウェブサイトに本作に連なるリヴァイアサンシリーズのPVがあったので、紹介しておきます。てかカッケーェェ!!!

気になったフレーズ・名言(抜粋)

デリン・シャープは歯を食いしばって、自分に言い聞かせた  —この変装を見破るなんて、誰にもできやしない。

そんなに難しいことじゃないさ、少年なんていう単純な人種になりきるくらい。

リヴァイアサン p.35

奴らの無作法をむしろ心強く思うんだな、アレック。これこそが、
あなたがまだ皇位継承争いの脅威だという証拠だ

ヴォルガー伯爵 リヴァイアサン p.61

そうだな。だけど、お前達のツェッペリン飛行船の外殻は、牛の腸でできてるじゃないか。それだって、動物の体内にいるようなもんだろ、違うか?革の上着を着るのだって、同じことだぜ!

デリン リヴァイアサン p.297

申し訳ないが、しゃべる動物にはまだ慣れないな。
どうも罪深い気がするんだよ。彼らをあそこまで人間みたいにするなんて。

アレック リヴァイアサン p.427

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