エンディミオン

SF

どうも、こんにちは。ポメラニ・アンパンです。早くも10月になりました。暑い季節が過ぎ去り、ようやく夜風が涼しい季節が巡ってきました。僕はこの時期が一番好きです。

1ヶ月前までは、暑さで夜の道を歩くのも嫌でしたが、最近は最寄駅から自宅まで歩いて帰ったりすることもあります。やはり自分の足で移動するというのは視界に色々なものが映りますから良い刺激になります。もちろん、健康にも良いでしょう。

まあ、そんなこんなで相変わらずマイペースに今日を生きる僕です。まあ生きていると色々ありますが、本はいつもそばにあり、僕に生きるうえで背中を押してくれます。

今日ご紹介するのは、またシリーズものの続編になってしまうのですが、以前こちらでも紹介した『ハイペリオン』シリーズの第3の作品にあたる『エンディミオン』です。

距離と時間を超えて巻き起こる戦いを、ダン・シモンズが圧倒的な筆力で描き切ったSF冒険活劇!!

読んだきっかけ

先月、『ハイペリオンの没落』を読みまして、やはり怒涛のストーリーと強く惹きつけられるストーリー、「めちゃめちゃおもしれ〜やんけ!!」と歓喜しながら読みました。しかし物語としてはまだ終わっておらず、次作である『エンディミオン』に続くことがわかった瞬間、インターネットで本作を探して注文したのでした。

『ハイペリオン』および『ハイペリオンの没落』についての感想はこちら↓

ハイペリオン | ポメラニ・アンパンの読書感想
The Impression of Books

あらすじ

<文庫本(上巻)背表紙より抜粋>

連邦の崩壊から三百年あまり、人類はカトリック教会、パクスの神権政治のもとに統べられていた。惑星ハイペリオンの狩猟ガイド、青年エンディミオンはパクス法廷により冤罪で処刑される直前、一人の老人に命を救われた。なんと老人はかつてのハイペリオン巡礼者、詩人サイリーナスだった!

老人は、まもなく開く<時間の墓標>から現われる救世主を守ってほしいと彼に依頼してくるが・・・・・・・傑作SF叙事詩、堂々の第三部!


28世紀、地球が手狭になった人類は、幾多の星に新天地を見出していた。人々は様々な星を居住できる環境に開発をすすめ、200を超える星々でそれぞれの営みを紡ぐ人々。彼らは星と星を転移できる《ゲート》を作り、互いにいつでも行き来ができるようになっていた。

そんな中、惑星ハイペリオンの遺跡<時間の墓標>で奇妙な現象が起きていることを察知した連邦CEOマイナ・グラッドストーンのもとに七人の巡礼者が集結。ルナール・ホイトフィドマン・カッサードマーティン・サイリーナスソル・ワイントラウブヘット・マスティーンブローン・レイミア領事。彼らは出自も立場も全く異なれど、互いの身の上を打ち明け合い苦難の道を歩み、遺跡の謎に迫る。

上記が『ハイペリオン』、『ハイペリオンの没落』の大まかなストーリー。ここから色々あり、三百年を経過して本作の物語が始まる。連邦はすでに瓦解し、それまで人類を宇宙の彼方此方へ転移させてきた<転移ゲート>も機能しなくなっている。連邦に代わって台頭してきた勢力がパクス。キリスト教を核とした組織で、強力な軍隊を持ち、瞬く間に多くの惑星を支配下に置いた。彼らの勢力が急速に拡大させてきた背景には<聖十字架>の存在がある。

ポメラニ・アンパン
ポメラニ・アンパン

聖十字架とは

『ハイペリオン』、『ハイペリオンの没落』にも登場した。十字架の形をしたそれは寄生体であり、これに貼りつかれた人間はどうやっても取り外すことができない。

その最大の効果(特徴)は、宿主が死亡すると聖十字架の機能が発動し、宿主を生き返らせるのだ!ただし、『ハイペリオン』に登場したビクラ族は聖十字架によって何度も死亡と蘇生を繰り返す副作用的な影響で知能減退を引き起こしていたが、パクスはこの弱点を克服し、聖十字架の蘇生機能を最大限に活用し信者(支配下の人々)を増やし、勢力を拡大させた。

パクスの勢力は多くの惑星に広がっていた。多くの人々は聖十字架を身につけパクスに恭順する。しかし、本作の主人公ロール・エンディミオンは違った。彼は聖十字架をその身に宿す事を良しとせず、己が人生を生きていた。ハイペリオンにて、旅人に対し鴨の猟をガイドする仕事をして生計を立てていた。

しかし、あることがきっかけで彼はパクスの法廷に連行され死刑を言い渡される。すんでのところで死刑を免れることができたのは、かつての巡礼メンバーの一人である詩人、マーティン・サイリーナスの手引きによるものだった。

マーティンはロールにある事を依頼するために手を回して助けたと言う。マーティンの依頼とは、まもなく<時間の墓標>より現れる一人の少女を保護し、彼女を守り、かつての地球=オールド・アースを見つけ、パクスの跳梁を挫けと、難題をふっかける。

少女は特別な存在であり、パクス軍は彼女の確保のために大群で<時間の墓標>に集結しているという。一人の少女のために大量の戦力が割かれているのに、老人はそこへ行き、少女を奪取せよと言うのである。

この難題に対し、半ばやけくそな気分で答えたロールに、マーティンは上機嫌に言う。「乾杯じゃ!」と。

そしてロールの苦難に満ちた冒険が始まる。ロールは、マーティンに仕えていた肌の青いアンドロイドであるA.ベティックを連れて旅立つ。

紆余曲折を経て、目的の少女と合流を果たすロールとべティック。少女の名はアイネイアー。彼女の年齢は12歳。金髪で歳のわりに聡明かつ大人びた言動でロールとべティックを特に振り回し、時に助言を与え、時に頼る。

アイネイアーの特別な力により、それまで機能を停止し、ただの建造物に過ぎなかった<ゲート>が作動。ロール、べティック、アイネイアーの三人は、ゲートを越え、星々を移動し、追跡者から逃れるための波乱に満ちた冒険を余儀なくされる。

彼らを追うはパクス軍の神父大佐デ・ソヤと屈強な部下達。デ・ソヤ神父大佐はアイネイアーをパクスに連れてゆく命令を受けていた。それに加えて、<時間の墓標>で見たアイネイアーの姿が脳裏にこびりつき、猛烈な執念で彼らを追う。

<コア>、<アウスター>、<パクス>、<シュライク>・・・数々の謎に満ちたこの世界で、いよいよ物語は確信に迫ってゆく。そして、ロール、べティック、アイネイアーは無事パクスの追撃を振り切れるか。

この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)

雰囲気

崩壊した文明、狩猟、播種船、移民、キリスト教、イスラム、かつての地球、空飛ぶ絨毯、砂漠、海が続く世界、川、筏、キャンプ、氷の洞窟、戦艦、病気、けが、大天使級急使船、復活槽、真の死・・・

七人の巡礼が活躍した時代から三百年で、大きく代わった世界。新たなる主人公ロールの大冒険が幕を開ける。ゲートをくぐるたびに全く別世界に行くワクワクとドキドキをお楽しみあれ。

読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎

ハイペリオンと同様、素晴らしい翻訳。読者をロール達の冒険へと誘う著者の筆力はここに来てさらに威力を増している。今回は、ロール達の敵対組織であるパクスがロール達の冒険と同じくらいの比率で緻密に描かれている。それらを含めて読みたくなる、読者を飽きさせない、それほど読みやすい!

ワクワク度:10 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎

なんだ、このワクワク感は!行く先々で予想だにしない展開が。これはもう、読むRPGだ!ロール、べティック、アイネイアー(とサポートメンバーに宇宙船もかな)のパーティーが挑む苦難に満ちた旅。しかし、旅の中で彼らの絆はいや増してゆく。

ハラハラ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

何が凄いって敵勢力であるはずのデ・ソヤ神父大佐の動きも、ハラハラもんなんですわ!パクスという巨大組織の中では、さまざまな人間が権力を振りかざし互いを牽制しあったり、人を動かす。組織の中で、デ・ソヤ神父大佐は命令に従って動いているわけだが、この神父大佐が凄く良いキャラクターで。この人がいなくなるだけでロール達一行の危険度は大きく下がるはずなのだが、いないと寂しくなるという絶妙な敵。彼らが肉薄する場面は手に汗握ります!

食欲増幅度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎

冒頭で老詩人からご馳走されるシーン、「焼き立てパン」、「鳥の肉のシャンパーニュ・マスタード・ソース」、「ビーフのカルパッチョ」、「ルッコラ添え」、「マンドレークの葉でくるんだフォアグラのソテー」・・・などなど具体的なメニュー名がある料理が出るシーン。この他、キャンプ中に少し食事をするシーンなどは惹かれますね!

胸キュン:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

ロールとアイネイアー、そしてアンドロイドのべティック、それぞれの絆が深まっていくのが良い。でも、結構グッと来たのはしゃべる宇宙船・・・。

ページをめくる加速度:10 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ ⭐⭐️⭐️⭐︎⭐︎

上巻、下巻トータル1,000ページくらいなんだが、あっという間。

希望度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ロールのポジティブさ、タフさに勇気づけられる!怪我もするし、病気にもなるし、とにかく泥臭いことでも逃げない彼こそ、ヒーローの鏡。床屋で散髪するヒーローだ!

絶望度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎

パクスの執念深さとその勢力の大きさに圧倒される。また文字通り、自らの命を何度もかけてでも追ってくるのは流石に恐ろしい。

残酷度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️⭐️

痛そうなシーンはひたすら読んでる側も痛くなりそうな凄惨な描写。

なんといっても本作では、パクスの大天使級急使船が量子化して(いわゆる瞬間移動?)移動する時の乗組員がねぇ・・・。詳細は読んでね!(ヒント聖十字架で蘇生できる!)

恐怖度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

足を怪我した状態で複数のサメにどつかれるシーンは一番恐怖を感じた!

ためになる:3 ⭐️⭐️⭐️

そんなこと考えて読む作品じゃあない。

泣ける:1 ⭐️

そこまで泣くシーンはなかったかなぁ。

読後感:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

凄く、良いところで終わるのです。もう、速攻で続く『エンディミオンの覚醒』を読みたくなります。

誰かに語りたい:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎⭐️

SF、ファンタジー好きには強烈に薦めたい!とにかく読めっ!って自信を持って言える作品です。

なぞ度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎

まだ最大の謎は残ってる。真の敵は誰か。アイネイアーは何者か。

静謐度:1 ⭐️

落ち着く暇もない。

笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️

A.べティックのちょっと間の抜けた会話や、感情豊かな宇宙船AIなど笑える箇所はある。

切ない:3 ⭐️⭐️⭐️

デ・ソヤ神父大佐の部下がもう二度と復活しない<真の死>に直面した時、切なくなった。敵なのに。

エロス:1 ⭐️

今作もほとんどなかった。

データ

原作タイトルENDYMION
日本語タイトルエンディミオン
著者ダン・シモンズ (Dan Simmons)
訳者酒井昭伸
発行元早川書房
コード(上巻)ISBN4-15-011389-0
(下巻)ISBN4-15-011390-4

まとめ

なんてこった!なぜ今までこんなに面白い作品を読んでなかったのか!僕の馬鹿野郎!と自分を罵倒したくなるほどハマった!

『ハイペリオン』、『ハイペリオンの没落』から続く本作。前2作が面白くないわけではないのですが、今作は面白さの質が違う!!

これは冷静に考えてみると、全2作は七人の巡礼が物語の中心で、その周りの要素として<シュライク>、<キリスト教>、<連邦>、<コア>などの要素が散りばめられていました。で、巡礼の七人ってば皆個性的過ぎると言うか・・・ちょっと特殊な人たちすぎるんですよ。

それと比べると、本作のロールは精神がまっすぐな青年。言い換えると僕ら凡人にとってどっちが感情移入しやすいかというと圧倒的にロールです。それもあって、本作は臨場感がすごかったんだなぁ、と改めて思いました。ロールはRPGでいうところの器用で生命力が高い<戦士>、<ハンター>的なポジションでしょう。

加えてアイネイアー。可愛い、賢い、神秘的、生意気な金髪12歳の少女。どんだけ設定盛り盛りなんだよ!ってくらい盛ってます!でも、まだまだ伸び代ありますからね!RPGでいうと<機械得意なジョブ>または賢さが高い<魔法使い>、<トラップ師>みたいな感じでしょうか。

べティックも良い味出してる。肌が青く、頭の髪の毛は禿げかかっているアンドロイド。アンドロイドとはいえ、死なないわけではないし、言葉も流暢に話すし、ロール達人間と何も変わらない大事な仲間ポジションってのが良い!実際、彼の活躍がなかったら窮地を脱出できなかったのは何度もある。RPGでいうところのそこそこなんでもできるタイプの<軽装備の戦士>とか<中距離支援兵士>みたいな感じかなぁ・・・。

この三人が充分に魅力的なんだが、忘れてはいけないのはデ・ソヤ神父大佐。変な名前だが凄く好きな登場人物の一人です。役職名も凄い。神父大佐。一見矛盾するような神父大佐をくっつけている。これだけでパクス=軍事組織を持つキリスト教って強烈に印象付けられました。こーいう翻訳もさすがです!!で、このデ・ソヤ神父大佐と彼の片腕のグレゴリウス。生粋の職業軍人って感じで、アイネイアーを追って追って追いまくって来るんです。お前らバッフクランかよ!と突っ込みながら読みました。

どーなるのかは詳しくは言いませんが、職務に忠実ゆえに抱える葛藤、あるあるなんですが、そこも面白いしこの男の行き着く先も凄く気になります。

そんな感じで、とっとと続く『エンディミオンの覚醒』を読みます!

気になったフレーズ・名言(抜粋)

どうでもいいことと思うかもしらんが、名前というものはだいじだぞ。

マーティン・サイリーナス
エンディミオン 上巻 p.48

何十億人だろうと、それぞれが好きにやればいい。ぼくにとってだいじなのは、自分の人生です。自分の人生は……自分のものとして送りたい。

ロール・エンディミオン
エンディミオン 上巻 p.122

乾杯じゃ。

愚かさに。聖なる狂気に。

尋常ならざる探求の旅に、

曠野で叫ぶ救世主に。

暴君の死に。われらが敵の混乱に。

ヒーローに。

床屋で散髪するヒーローに。

マーティン・サイリーナス
エンディミオン 上巻 p.133

そうだな。やっぱり、チョコレートにかぎるよ。

ロール・エンディミオン
エンディミオン 上巻 p.281

「なにも忘れものはないかな?」せまい砂浜に立ち、武器や荷物を見おろしながら、ぼくはふたりに問いかけた。「わたしです」手首のコムログから、宇宙船がいった。その声には、ちょっぴり悲しげな響きが聞きとれた。

エンディミオン 上巻 p.492

キャンプは雑事をすっかりわすれさせてくれる。自然のなかには……うまくいえないが……なにか大きなものとの触れあいを感じさせてくれるんだ

ロール・エンディミオン
エンディミオン 下巻 p.13

運がよければ、処刑されてから破門されるだろう。運が悪ければ、破門されたうえで処刑されるだろうな

デ・ソヤ神父大佐
エンディミオン 下巻 p.502

天才というのはね、ヘマをするものなのよ、ロール。その証拠に、わたしたちの旅をふりかえってみて。さあ、もっといろいろ見てまわりましょう。

アイネイアー
エンディミオン 下巻 p.514

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