こんにちは、ポメラニ・アンパンです。突然ですが、あなたは虫が好きですか?!かく言う僕は虫は苦手です!ほとんど触れません!
夏に入って、しばらくは気温も低く雨が続きましたが、ようやく暑くなりそうですね。そうなると奴ら=虫も本格的に動き出すこの時期。ああああ、嫌だなぁ〜と思う方も多いでしょう。
外に出れば、蚊に噛まれるし、雨の次の日はナメクジやミミズを見つける事もありますね。大きな蜘蛛やゲジゲジを見たら卒倒する人もいるのでは?
今回は、そんな、《虫》が犯罪捜査の手がかりになる小説をご紹介しましょう。ムシが嫌な人はムシしてください、なんちゃって。
ご紹介するのは川瀬七緒さん著作の『法医昆虫学捜査官』。
読んだきっかけ
はい、ポメラニ・アンパンの悪い癖が出ました。本屋さんで物色していて、タイトルが目に飛び込んできましたよ!『法医昆虫学?聞いたことないワードだなぁ・・・』と手にとってみたのが運の尽き。裏表紙のあらすじを読んで購入決定。
だって、昆虫の生態や行動を科学的根拠として犯罪捜査をする小説なんて読んだ事なかったですからねぇ。どんなものかと、僕の好奇心がこの本をレジに連れて行きましたとさ。
あらすじ
《グロ注意》
東京、板橋のとある建物で火災が発生。そこに、女性と思われる一人の焼死体があった。死因確認のための解剖に立ち会った岩楯警部補と若手相棒の鰐川は、吐き気を催す光景を目の当たりにする。
その死体は全身が焼けただれ、損傷が至る所に及んでいた。だが奇妙な事に、胃袋と消化器官だけが影も形も見当たらない。そして、腎臓の脇に奇妙な物体を発見する解剖医。
その物体とは・・・ソフトボール状に折り重なった生きたウジの塊だった!
あまりにも奇異な遺体、そして現れたウジ。ウジが消化器官を喰ったのか?遺体の損傷状態から死亡推定時刻を特定する事は難しく、事件の解明は困難が予想された。
そんな折警察上層部の決定で、法医昆虫学の専門家に捜査権限の一部を与えると告げられる。日本は欧米に比べ、法医昆虫学は出遅れているので試験的な意味合いもある、との事だった。
法医昆虫学とは、虫を使って科学的な操作をする学問の事。
例えば、死体に群がる虫の種類や成長状態から死亡推定時刻を割り出したり、虫が吸血・摂食した部位や物質からDNAを採取したり・・・。
アメリカではそれなりに研究が進んでいるようだけど、日本ではあまり馴染みがないね。
ズブの素人が現場を引っ掻き回すと思うと苛立ちを隠せない岩楯。気乗りしないまま、件の昆虫学者、赤堀涼子准教授と出会う。
赤堀は昆虫のスペシャリストにして、虫を心からが愛しすぎる女だった。ヘビを素手で掴むことは序の口で、ウジを嬉々とした笑顔で可愛いと表現する彼女の研究室の冷蔵庫には、ホルマリン漬けされた何かが垣間見える。
被害者の交友関係を洗っていく岩楯と鰐川。現場の虫の状況から真実に近づいていく赤堀と昆虫コンサルタントの辻岡。
複雑に絡み合う《人間》の思惑・・・
生きるために喰い、移動する《虫》・・・
虫が行き着く先に、真実があるのか・・・。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
虫が苦手じゃない人も、序盤のウジボールがインパクトあり過ぎのグロテスク度。そこを通過すれば、ちょっと変わった犯罪捜査ストーリーを楽しめる。警官と昆虫学者という組み合わせが面白い。とりわけ、仕事一筋の岩楯と昆虫大好き人間の赤堀のギャップがページをめくる速度を加速させる。赤堀の純真さが眩しい。人が何かにのめり込む事は、たとえそれが何であれ美しい。
読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
句読点が多めで、文章のリズムも小気味良い。どんどん読めます。
ワクワク度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
虫の行動が次への捜査にきっかけになる事が多く、先が気になって仕方がないほどワクワクする。
ハラハラ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
後半の赤堀が、本当のピンチすぎて、手に汗握り、冷や冷や、ハラハラしっぱなしになるシーンがある。
食欲増幅度:−2 ☠️☠️
大半の人は食欲を無くす小説だよ(笑)。岩楯警部補の奥さんが作る鍋料理もアレな感じだし・・・。
冒険度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
岩楯・鰐川にとっては仕事。赤堀にとっては虫の動きを生態を知るために動き回るが、冒険、というより捜査だな
胸キュン:3 ⭐️⭐️⭐️
ちょっとしたロマンスあり。シリーズ物だから、この先どうにかなるのかな。
血湧き肉躍る:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
血潮が滾るような戦いは無い。しかし、犯人を前にして岩楯の怒りが爆発する
希望度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
事件は何とか解決したものの・・・。
絶望度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
自分が赤堀と同じような状況だったら十中八九死んでるだろうな・・・。
残酷度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
死体の描写は残酷というよりグロさが勝る。
恐怖度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
虫のグロテスクさが霞むほど残虐な人間が出てくる。やはり人間の敵は人間か?
ためになる:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
様々な虫の生態を、赤堀が解説してくれる。虫、ひいては自然界に生きる生き物って凄いなと思わせてくれる
泣ける:2 ⭐️⭐️
あんまり泣く要素は無いかなぁ。
ハッピーエンド:3 ⭐️⭐️⭐️
謎は解けるが後味はイマイチ。
誰かに語りたい:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
もっと人気が出ても良さそうな作品だと感じた。現実に、どのくらい法医昆虫学が犯罪捜査に使われているかわからないが、本格的に警察が導入したらもっと犯罪捜査のレベルや質が上がるのでは?と思った。
なぞ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
人間関係の謎と虫の生態という、二つの軸が絡むミステリー。
静謐度:3 ⭐️⭐️⭐️
常に状況が変わっていくので、静謐さはあまり感じない。
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️
赤堀の屈託の無さが微笑ましい。
切ない:3 ⭐️⭐️⭐️
岩楯のような家庭環境を見ると、切ないというか、悲しい。
エロス:1 ⭐️
エロさはほとんど無い。
データ
タイトル | 法医昆虫学捜査官 |
著者 | 川瀬七緒 |
発行元 | 講談社 |
コード | ISBN978-4-06-277890-9 |
まとめ
本作も当たりでした!僕は読んだ事のない著者の作品って『面白いかな?自分と波長が合うかな?文章ののリズム感どうかな?』を気にしてしまうんですが、杞憂に終わって、読んで良かった〜と感じました。川瀬七緒氏の作品、本作を読んで、他の作品も読みたくなりましたね。特に、この『法医昆虫学捜査官』はシリーズものになっているので、それは絶対読む!
ところで、虫の生態を理解して科学的に分析する『法医昆虫学』というワードを本作で初めて知りました。2019年現在の時点で発見されている昆虫は100万種類と言われており、地球上の生物種の半数を占めるそうだ。という事は、僕たちは昆虫に囲まれて生きている、と言えるのではないでしょうか。
本作では、警察の岩楯、鰐川が登場し、彼らは僕らが抱く一般的な警察官のイメージに沿っています。すなわち、正義感があり仕事にプライドを持つがゆえ、部外者に現場に踏み込まれる事を嫌う点。
警官の二人とは対照的な存在として、昆虫学者の赤堀と昆虫コンサルタントの辻岡が登場します。最初は赤堀に対し懐疑的だった岩楯も、赤堀の虫についての並々ならぬ知識と理論的な説明、そして何より彼女の純真さに少しずつ距離を縮めていくのです。二人の距離感の変化も見逃せない!
ストーリーは、犯人かと思う候補は数人出てきますが、やはり僕ポメラニ・アンパンには誰が犯人かわからなかったです。とはいえ、この作品はいわゆるシャーロック・ホームズのような推理ものでは無いので、淡々とページをめくっていくだけでまるでテレビドラマを観ているかのように話がビュンビュン進みます。そして最後は一気にクライマックスに突入します。
次々と犯人らしき人物に事情聴取し、真実に迫っていくところは、ワクワクとドキドキです!
気になったフレーズ・名言(抜粋)
刑事さん、ウジとかアオムシとか柔らかくてかわいい虫はね、
赤堀涼子 法医昆虫学捜査官 p.107
それで生きていけるように究極進化してるんですよ。
大学の考古学教室にも、ある甲虫を貸し出してますよ。骨格標本を作るときに、
辻岡大吉 法医昆虫学捜査官 p.216
骨を傷つけないできれいに組織だけを取り除けるのは、虫しかいませんからね。つまりは、
残ってる肉を食べさせるんですけど
こういうことなの。人を含めた全動物の90パーセント以上が虫。
赤堀涼子 法医昆虫学捜査官 p.263
もっとわかりやすく言えば、人ひとりに対して、虫は十億ね。
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