こんにちは、ポメラニ・アンパンです。梅雨がようやく明けそうですね。今年はここ最近では一番梅雨の期間が長かったようです。雨が続き、気持ちが晴れないという人も多いかもしれませんが、僕は、雨の日が嫌いではありません。
雨の降る日は、本を読む事に集中できるんです。晴れているとどうしても『どこかに行こうか・・・』と好奇心が外に向いてしまいますが、雨の日は『今日は本を読もう』とスイッチが切り替わるんですよ。
しかし、雨でも外に出ないといけない場合もありますよね。その時は、本だけは濡らさないように細心の注意を払います。僕は、自分の体が濡れようが靴に水が入ろうがあまり気にしないんですが、本が濡れるのだけは超嫌です!!
だから、いつも持ち歩く文庫本にはビニールカヴァーをつけています。お気に入りの本は極力大事にしたいですからね。
さて、そんなわけで今回ご紹介する本は・・・
アガサ・クリスティの『スタイルズ荘の怪事件』です。


読んだきっかけ
本屋さんでアガサ・クリスティさんの作品が並んでいるのを何気なく見ていて、ふと思ったんですよね。『アガサ・クリスティはん・・・僕・・・読んだ事ないやん!』って。それで、一番最初の作品から読みたいと思ったので、この本を手に取ったのです。
あらすじ
傷病兵のヘイスティングズが旧友ジョンの誘いで、《スタイルズ荘》に招かれた。荘にはイングルソープ夫妻、カヴェンディッシュ夫妻やその使用人達が暮らしていた。しかし、そのスタイルズ荘で毒殺事件が起きた。スタイルズ荘の女主人であったエミリー・イングルソープが何者かに殺された。ヘイスティングズは事件の真相暴くため、友人である紳士エルキュール・ポアロを呼んだ。
人の思惑と行動、状況や物的証拠を基に、筋道立てた推理を行うポアロ。半ば強制的にポアロの手伝いをする羽目になるヘイステイングズは、ポアロの突飛な行動や思考に翻弄される。しかし、一見不可解はポアロの行動も、あるべき姿、迎えるべき真実、真の犯人へとつながってゆく。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
いわゆるミステリー小説の定番とも言える、《屋敷》、《親族間の遺産・財産を要因とした確執》、《部外者の探偵が真犯人を特定する》というオーソドックスな作品。むしろこの作品がこれらの定番を作ったのかも。
スタイルズ荘の面々は皆、腹に一物抱えてそう。しかし、飄々とした語り部のヘイスティングズと、言葉遣いは丁寧だが、何を考えているか分からない奇怪な行動をとる紳士エルキュール・ポアロが、鬱々とした屋敷全体に漂う空気を払う役目を果たしている。このため、読んでいる方は、あまり暗い気分にならず、ストーリーを追っていける。
また、推理小説の醍醐味として、残された証拠や人物の供述から真犯人を推理するのも一興。
読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
登場人物のヘイスティングズが語り部となっており、スタイルズ荘で起きた事件を、ヘイスティングズ視点で追っていくので、読みやすい。
ワクワク度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
スタイルズ荘の人々の関係性やポアロの推理、行動によって謎が暴かれていくのはワクワクする
ハラハラ度:3 ⭐️⭐️⭐️
殺人事件ではあるが、猟奇的な快楽殺人ではない犯人像のため、次に襲われる心配を誰もしていないのでハラハラ感は薄い。
食欲増幅度:1 ⭐️
食欲を刺激される描写はあまりない
冒険度:1 ⭐️
最初から最後まで語り部であるヘイスティングスは屋敷にいるため、冒険要素は無い。
胸キュン:2 ⭐️⭐️
カヴェンディッシュ夫人やシンシアのような魅力的な女性が出てくる。しかし、恋愛主軸の作品では無いためあまり胸キュンするシーンは無い
血湧き肉躍る:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
バトルものでは無いので、派手なアクションは無い。その代わり、頭を回転させて読んでいけばバトルものに引けをとらない楽しさがある
希望度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ポアロの自身への自信、どんな事態に陥っても事件を解決するだろうという安心感は凄い
絶望度:1 ⭐️
絶望感はほとんど感じなかった
残酷度:1 ⭐️
殺人事件だが、残虐描写は無い
恐怖度:1 ⭐️
恐怖を感じたシーンは無い
ためになる:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
毒に使われる物質の話、ポアロ流・物事の考え方など
泣ける:1 ⭐️
泣くシーンは無い
ハッピーエンド:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
真犯人を突き止め、謎は全て解かれる
誰かに語りたい:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
オーソドックスなミステリー小説。アガサ・クリスティさんの処女作なので、オススメしやすい。
なぞ度:10 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
人物、状況、物、ありとあらゆる物が謎に思える
静謐度:2 ⭐️⭐️
ヘイスティングズ視点で話が進むため、あまり静謐な雰囲気を感じる場面は無かった
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️
ポアロとヘイスティングズの掛け合いは読んでいて楽しい。笑えるかは別として。
切ない:2 ⭐️⭐️
あまり切なさを感じるところは無かった。
エロス:1 ⭐️
無い。
データ
原作タイトル | The Mysterious Affair at Styles |
日本語タイトル | スタイルズ荘の怪事件 |
著者 | アガサ・クリスティ (Agatha Christie) |
訳者 | 矢沢聖子 |
発行元 | 早川書房 |
コード | ISBN978-4-15-130001-1 |
まとめ
推理ものの礎を築いたと言われるだけあって、予想以上に面白かったのが率直な感想。
遺産相続、アリバイ、薬の調合、謎の博士、隣の夫人との密会、使用人が聞いた女主人と誰かの口論・・・読者が推理する余地をふんだんに散りばめつつも、どいつもこいつも怪しさが漂い、真犯人を当てるのは至難の技。
推理小説の定番である《招かれた先で殺人事件発生》、《血縁関係がある人や親戚同士ならではの確執》、《家具や食器などのオブジェクト描写》など読者にヒントを与えているようでもあり、読者を惑わすようでもあるアイテムが至る所に散らばっている。
真剣に犯人を探す事もありだが、もっと気軽に、単純に文字を追っていくだけでも楽しめる筆力が流石のアガサ・クリスティーさん。
主役のポアロがベルギーから亡命してきた人間、語り部のヘイスティングズが傷病軍人という設定もなかなか面白い。
本作を読んで、ポアロやヘイスティングズの持ち味に興味が出てきたので、ポアロが出てくる他の作品も読みたくなった!
気になったフレーズ・名言(抜粋)
よく調べて、選り分ける。重要なことは取っておいて、重要でないモノは、ぷーっと吹き飛ばす!
エルキュール・ポアロ スタイルズ荘の怪事件 p.65
“たいしたことじゃないーどうだっていい。つじつまが合わない。忘れてしまおう。”
そんな考え方をしていたら、なにも見えない。どうだっていいことなど、なにひとつないんです。
エルキュール・ポアロ スタイルズ荘の怪事件 p.66
エルキュール・ポアロ以外のだれもそんなことをしようなどと思わないでしょう!でも、それを責めるのは間違いです。一組の男女の幸福ほど大切なものはこの世にはありません
エルキュール・ポアロ スタイルズ荘の怪事件 p.353
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