こんにちは、ポメラニ・アンパンです。暑いですね〜。もう、暑さが殺しに来てる今日この頃。僕は汗っかきなので、今日くらいの天気だと、ただ立ってるだけど汗が滴るんですけど・・・。
ってなわけで、日々暑くて溶けそうですが、なんとか生きてます。こんな日は、静かに冷房の効いた部屋で読書が一番!そんなわけで、今日は僕のお気に入りの一作を紹介します。
森博嗣さんの『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』です。
この本を読んだきっかけ
僕が最初に読書を好きになったきっかけの小説が「パラサイト・イブ」だったわけです。作家は瀬名秀明さん。当時、「パラサイト・イブ」がヒットした事で、「理系」の作家がクローズアップされたことがありました。その後、多感な時期の僕に森博嗣さんの本作が発売され瞬く間に「理系ミステリー」という謳い文句で情報が飛び交っていたと思います。本屋さんで本作を見た時、タイトル・表紙、全てに惹かれたと言っても過言ではないでしょう。「Fって何?」という事は一切考えず、見た瞬間レジに持って行きました。ここから、森博嗣さんは僕のなかで十の指に入る作家さんになりました。
あらすじ
N大学工学部の助教授、犀川創平と彼の教え子で恩師の娘である西之園萌絵は、天才と名高い人物、真賀田四季が研究所を構える妃真加島に行く機会を得る。
真賀田四季、幼少の頃よりコンピュータサイエンスの頂点に君臨する天才。ゲームやOSの開発、ありとあらゆるコンピュータ関連で活躍し、11歳でMITの博士号を取得したほどの人物。しかし、14歳の時、両親を殺害した疑いで逮捕されている。しかし、その後心神喪失とのことで無実とされた。その後は人目を忍んで、孤島の研究所にて研究を続けているという。
萌絵は、以前一度真賀田四季に会いに島に行き、彼女とのコンタクトに成功した。直接の対面ではなかったものの、モニター越しにも天才の息吹を感じたのだった。その話を聞いた犀川は心底羨ましく思った。
萌絵の両親はすでに他界しているが、父親が犀川の恩師であった。また、叔父は愛知県警のトップ、叔母は県知事の夫人。萌絵自身も両親の遺産を相続し、赤いスポーツカーを所有。また、諏訪野という執事と暮らしている。
犀川の真賀田四季に対する憧れ、萌絵の人脈、萌絵の犀川に対する心情、それら複雑な要素が運よく重なり、犀川のゼミ合宿を真賀田四季研究所がある妃真加島にて行うことになった。島にはキャンプ施設もあり、総勢11名の犀川ゼミのメンバーは暑い最中、陸地から船で40分あまり揺られてこの島にやってきた。
学生らしく皆キャンプに勤しんでテントを張ったりして過ごし、夜になった。萌絵と犀川は他の学生がテントに入った後も雑談にふけっていたが、その話が終わった時、萌絵は提案する。研究所へ行ってみませんか、と。
萌絵は頭痛を装い、アポを取っていないにも関わらず研究所に入ることに成功した犀川と萌絵。昼夜の別なく働いている真賀田研究所の研究員たちは、常識を気にしない人々なので夜10時を過ぎて現れた二人の訪問者を受け入れる。研究所副所長の山根も研究がひと段落したからと犀川と萌絵の来訪をむしろ喜ぶ。そこで、犀川と萌絵は真賀田式博士に会えないかと山根に頼む。だが、山根からの返答は、意外なものだった。真賀田式博士に連絡がつかないと。
真賀田四季は直接の面会に応じないが、モニターごしに応答し、連絡しても反応がないというのは異例だと山根は言う。不審に思った研究員たちは真賀田四季が籠もる部屋の扉を開ける事にした。犀川と萌絵も同行する。そして、扉が開いた。
だが、そこから出てきたのは・・・ウェディングドレスを纏った人形・・・
ではなく、ロボットに載せられ、移動してくるウェディングドレスをきた死体だった。
死体は真賀田四季その人。自殺かと誰もが思ったが、死体を確認した際、自殺ではないことがわかる。
そう、両手両足が切断されているのだ。
その場に居合わせてしまった犀川と萌絵。
この出来事をどう解釈し、どう打破するのか。
事実を明らかにするため、犀川と萌絵が頭脳をめぐらす。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
大学、助教授、ゼミ、生徒、フロッピー、パソコン、人工知能、お嬢様、執事、殺人、密室、孤島、天才、研究者、ロボット、籠る、テクノロジー・・・。
すっきりとした文章と個性的な登場人物が、読む意欲を刺激する。静謐さと緊張感が絶妙なバランスで配置された名作。森博嗣伝説はここから始まる。
読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
テンポがよく、文章も理路整然としていて本当に読みやすい。
ワクワク度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
問題が起きた後、犀川や萌がどう立ち回るのかを想像するとワクワクする。
ハラハラ度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
ハラハラという感じはそこまで多くはない。
食欲増幅度:2 ⭐️⭐️
キャンプのシーンはあるが、食べ物が美味しそうだと感じる描写は無い。それよりも犀川が飲むコーヒーの方が美味そう。
胸キュン:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
犀川と萌絵の関係性がベタベタし過ぎず、ちょうど良い。
ページをめくる加速度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
展開が早く、どんどん読める。
希望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
どんな不思議な事にも、必ず真実があると思わせてくれる。
絶望度:2 ⭐️⭐️
ストーリーに絶望感を感じる箇所はそれほど無い。
残酷度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
いきなり四肢を切断された遺体が出てくる。
恐怖度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
密閉空間で死体が出てきて、しかも自殺ではないとわかった時は怖いなぁ・・・。
ためになる:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
作中、人は移動をし直接人と人が触れ合ったり出会ったりする事はそのうちとても贅沢な事になる、とあるが、何か今の状況を見通していたのかと思う節があり、筆者の先見性や哲学が垣間見える。
泣ける:2 ⭐️⭐️
泣けるシーンはそこまで無い。
読後感:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
本作の事件は意外な結末で幕を閉じる。しかし、シリーズ物なので、次がどんどん読みたくなる。
誰かに語りたい:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
今更語るまでもない名作。
なぞ度:1 ⭐️
作中の謎はほぼ解決されたと思う。
静謐度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
なぜだからわからないんだけど、森博嗣さんの作品って凄く「静か」に感じるんだよ。
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️
萌絵のお嬢様レベルが突き抜けていて、その行動が突飛なので笑える箇所はある。
切ない:1 ⭐️
切なさはあまり無い。
エロス:1 ⭐️
ちょっとだけ。
データ
タイトル | すべてがFになる THE PERFECT INSIDER |
著者 | 森博嗣 |
発行元 | 講談社 |
コード | ISBN-0626392-4 |
まとめ
我が読書人生で衝撃を受けた本作、数年ぶりの久しぶり再度だったわけですが・・・
いや〜〜〜、めっちゃ面白い!!やっぱ犀川の思考って僕の人生にめちゃめちゃ影響を与えている。無駄な会議が嫌いだったり、健康的?何それ美味しいの?って思うし、何より時間の大切さは犀川に教えてもらったようなもんだ。あと、萌絵ちゃんも良い意味で本当濃いキャラしてる!友達に欲しいような、欲しくないような、そんな人ですね!
今回、読んでいて犯人が誰だったか、ストーリーがどんなだったかを7割近く忘れていて、ほとんど初読のような感じで読めたので、また楽しめた。
あと、真賀田四季先生のパソコンのスペックとかが出てくる部分で、「ハードディスクには1GBの容量がある」という部分で僕は「おお!」となりました。本作が発売されたのが1998年。
まだWindows98が出て少しした頃。周りにインターネットをやってた人も少なかった。僕が本格的にPCに触れたのは2000年に大学入学してから。そのころを思い返してみても、今では常識だろうけど「1GB」なんて表示は目にしたことがなかったと思う。外付けハードディスクでもせいぜい300MBくらいだったんじゃなかろうか。だって、1.4MBのフロッピーディスクに論文を入れてバリバリ使ってたからねぇ。
そう考えると、真賀田四季博士のPCのスペック、今の時代に換算するとすごいんだろうな〜、と思った。こんなところも楽しめるのが本作のまた別の魅力!
あと森博嗣作品はしおりもオリジナル!これ、本当に大事にしてます!お気に入り!
というわけで、何度読んでも楽しめる本作、やっぱり大好きです!
気に入ったフレーズ・名言(抜粋)
もし、電子メールが使えるのなら、こんな会議そのものが不必要なはずである。議事録や分厚い資料のコピーだって不要になる。有限の資源と優秀な頭脳が、そして、何より貴重な時間が、こうして無駄遣いされているのだ。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER p.25
僕ら研究者は、何も生産していない、無責任さだけが取り柄だからね。でも、百年、二百年さきのことを考えられるのは、僕らだけなんだよ。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER p.81
私たちが得た情報は、全部、人から聞いたものです。〜中略〜
どれが本当で、どれが嘘なのなのか、実際に見られるものは見て、調べ直さないといけませんね。
西之園萌絵
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER p.232
Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり命に限りなく等しいのである。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER p.308
元来、人間はそれを目指してきた。仕事をしないために、頑張ってきたんじゃないのかな?今さら、仕事がなくなるなんて騒いでいるのはおかしいよ。仕事をすることが人間の本質ではない。ぶらぶらしている方が、ずっと創造的だ。それが文化だと思うよ、僕は
犀川創平
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER p.359
いえ・・・・・、煙草が吸いたいのです。水の中では吸えないでしょう?
犀川創平
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER p.451
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