海底二万里

SF

こんにちは、ポメラニ・アンパンです。

いや〜、今年の8月は暑かった!本当に太陽が殺しに来てる感じでしたね。

僕も気温差や湿度で頭クラクラしたり、猛烈なダルさに襲われたりで大変でした。

8月の最後の週からここ数日で、ようやく少し涼しさが出てきましたね。

さて、そんな暑い日も僕は本を読んでいました。

その名も『海底二万里』

フランスの小説家、ジュール・ヴェルヌ氏の名作ですね!

読んだきっかけ

きっかけは友人が熱烈にススメてきたからです。僕は、普段あまり他人のススメで本を選ばないのですが、その友人は普段あまり本を読まないのに、この海底二万里だけはやたらと押してきたのです。

かく言う僕も、この作品を知らなかった訳ではありません。20年以上前、僕が幼い頃にディズニー映画で観たのがこの海底二万里との出会いでした。

アニメーションが強いディズニー映画には珍しく、この映画は実写でした。

幼い頃に観て、印象に残っている二つのシーンがあります。一つはネモ船長がノーチラス号の中でオルガンを無心で弾くところ。もう一つは、巨大なイカと戦うシーン。

映画のシーンを思い出し、友人のススメも後押しし、僕はついに本作を読み始めたのでした。

夏の暑い盛りに読んだのですが、広大な海底を旅するイメージが膨らみ、涼しさすら感じました

あらすじ

1866年、世界の海で、謎の沈没事件が頻繁に発生していた。人々の間では怪物の噂が流れ、生物学者や研究者の間では、巨大な新種の生物がいる、との学説も広がりつつあった。

生物学者のアロナクス、その従者コンセイユ、銛打ちの達人ネッド・ランドの3人は、謎の生物の調査のために高速フリゲート艦『エイブラハム・リンカーン号』に搭乗する。

数ヶ月に及ぶ探索の末、ついに怪物に遭遇。高速でアロナクス達が乗る船に接近してくる怪物。船に物凄い衝撃が走り、アロナクスは海に投げ出され、主人を助けに海に飛び込むコンセイユ。銛打ちネッドは怪物に銛を打とうとするも銛が弾き飛ばされた!

それもそのはず、怪物の正体はなんと鋼鉄の潜水艦だった。しかも、当時の技術力を遥かに凌駕する、超性能を有する潜水艦であり、その名はノーチラス号

ポメラニ・アンパン
ポメラニ・アンパン

1866年当時の潜水艦はまだ沿岸部しか航行できなかったみたい。外海を自由に航行できるほどの性能を持つ潜水艦はまだ存在すらしていない。

海に投げ出されたアロナクス、コンセイユ、ネッドの3人は、なんとか呼吸ができる状態で《何か》の上に乗って海を漂っていた。最初は巨大な生物かと思っていたが、3人が乗っていたのは『エイブラハム・リンカーン号』を大破させた張本人である潜水艦《ノーチラス号》だった。

ノーチラス号にはネモ船長とそのクルー達が乗っていた。ネモ船長の命令で、《招かれざる3人=アロナクス、コンセイユ、ネッド》は、母国に帰る事を禁じられるが、潜水艦の中では自由に暮らして良いと言われる。母国に帰れない事に納得できない3人だが、従わなければ命の危険があると思いしぶしぶ従う。

ネモ船長は実に謎の多い人物だった。陸上の人間社会を極端に嫌っている。その反面、海の生物・資源にはこだわりがあり、強く尊敬の念を抱いていることがわかる。陸上の人間には背を向けた人間だと言いつつも、アロナクス教授の文献は目を通していたり、3人の《招かれざる客》を牢獄に閉じ込めたと思えば、豪勢な料理で歓迎したり・・。

こうして、いつ終るとも知らないノーチラス号での生活が始まった。ノーチラス号が海底から浮上するのは、一日一回、空気を取り込む時だけ。ノーチラス号には、サロンに図書室がある。サロンには世界中の名画が燦然と展示され、図書室には1万2000冊もの蔵書がぎっしりと詰まっている。アロナクス教授は展示品の数々、蔵書の多さと質の高いラインナップに改めてネモ船長に対する驚嘆と尊敬の念を抱くのであった。

アロナクス教授はネモ船長の海の知識、神秘なる世界で出会う未知の生物への好奇心とが結びつき、潜水艦での生活に喜びを感じていた。コンセイユは分類学の知識を生かして、その目で見た生物をカテゴライズしてゆく。基本的に、自分の意思を発する事は少なく、主人であるアロナクスに盲従する。一方で、銛打ちネッドだけはネモ船長から自由を奪われたと感じて強い反感の念を抱くようになる

こうして、奇妙で不思議な海底生活が始まった。ノーチラス号は世界中のあらゆる海の中を航行できる。途中、《海の森》にて海の資源を取りに行ったり、死亡した船員を海底の墓に埋葬したり・・・。陸上からでは決して叶わない不思議な体験をする。

この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)

雰囲気

船を沈める怪物の噂に始まり、その正体は謎の潜水艦。そしてその潜水艦ノーチラス号を駆るのはネモ船長という謎の男。偶然乗り込む事になったアロナクス教授、コンセイユ、ネッドが海底世界で不思議な体験をする。ちなみに女性は一人も出てこない。おっさん達が船の中や海底で感動し、驚き、結束し、疑心暗記に陥ったり、反抗する冒険小説といったところ。

また、世界中の海、地名、魚、植物の名前がこれでもかと言うほど出てくるが、本書の巻末に詳細な註が付いていて、それを確認しながら読むのも楽しい。時間に余裕があればインターネットでそれらの語を検索しながら読むともっと楽しい。特に画像検索。例えば、『グンカンドリ』を検索し、画像を確認する事でより一層イメージがしやすくなる。

読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

本作は主人公の一人であるアロナクス教授の視点で綴られている。彼の体験した事を日記風に書いてあるため、読者はそれを追体験する感じ。結論、とても読みやすい

ワクワク度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

怪物かと思ったら超テクノロジーを結集した潜水艦が出てきて、無理やり潜水艦での生活を強いられるも、あまりに神秘的な体験の連続で戸惑いを隠せないアロナクス教授達。船の針路もネモ船長の一存で決まるため、『次はどこへ行くんだろう?何が起こるんだろう?』と常に期待して読める。

ハラハラ度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

氷で身動きが取れなくなったり、巨大なタコと戦ったり、空気が足りなくなったり・・・なかなかのピンチに陥るので、その際はハラハラします。

食欲増幅度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ネモ船長が最初に歓迎として出してくれる料理。全て海で取れるものを食材として料理されたご馳走が美味しそう。

冒険度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ネモ船長にとってはノーチラス号で世界の海を航行する事は日常だが、アロナクス教授達にとっては未知の連続。海底で遭遇する生き物達、自然の脅威、体験する事全てが冒険と言える。

胸キュン:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

アロナクス教授とネモ船長は、互いにリスペクトしあっている。特にアロナクス教授がネモ船長に対する描写が、読む人にとっては切なく感じるかもしれない。

血湧き肉躍る:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

正面切って何かと物理的に戦うシーンはほとんどない本作。後半に登場する巨大タコとの死闘は手に汗を握る展開だった!銛打ちランドの真骨頂がここで見れる。ネモ船長も強い!

希望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

冒険小説だが希望度は高くない。その理由として、やはりネモ船長の影をまとった人物像と、アロナクス教授達は《自ら望んでノーチラス号に乗っているのではない》事が大きい。ネモ船長もアロナクス達も仕方なく一緒にいるだけ。その中で一致団結するシーンがあったり、心を通わせたかに思えるシーンがあるのだが、やはり結局は《自分達の自由を奪った者》と《招かれざる客》の関係から、とてつもなく大きい壁がある。

絶望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

アロナクス教授にしてみれば、《故郷に帰る事ができない、命を奪われるかもしれない》と感じつつも、ノーチラス号での生活を楽しんでいるので、読者もあまり絶望感は感じない。あえて言うなら、ネモ船長と、底の底では分かり合えない絶望感。

残酷度:3 ⭐️⭐️⭐️

残酷描写は少ない。大ダコとの戦いで、悲惨な死に方をした船員がいるが。

恐怖度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ノーチラス号が身動きできなくなるシーンや空気が足りなくなるシーンは怖かった。海底で空気が足りなくなる恐怖は想像を絶すると思う。

ためになる:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

世界の色々な地名、海の名前、生き物の名前を知る事ができる。地図やインターネットを用意して読むと勉強になる。

泣ける:3 ⭐️⭐️⭐️

全体的にちょっと切ない

ハッピーエンド:2 ⭐️⭐️

めでたしめでたし、ではない。

誰かに語りたい:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

僕の友人が熱烈に押してきただけあって、人に薦めやすい作品だと思う。ディズニー好きを語る人がいて、本作を知らなかったらぜひ教えてあげよう!

なぞ度:2 ⭐️⭐️

海底の謎は全てネモ船長が説明してくれるので、読者が困惑するような謎はほとんど無い。

静謐度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️ 

陸上の喧騒が全く届かない深い海の中を描いた作品なので、静謐さは感じられる。涼しさも。

笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️

従者のコンセイユと銛打ちネッドが意気投合するシーンもあり、微笑ましい。

切ない:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️

ネモ船長がオルガンを弾いているシーンはなぜか、切なさを感じる。そのほかでは、ネモ船長とアロナクス教授、お互いに認め合っているにも関わらず、如何ともしがたい壁がある事に二人とも気づいているようで切ない。

エロス:1 ⭐️

無い。

データ

原作タイトルVINGT MILLE LIEUES SOUS LES MERS
著者ジュール・ヴェルヌ
訳者村松 潔
発行元新潮文庫
コード(上巻)ISBN978-4-10-204402-5
(下巻)ISBN978-4-10-204403-2

まとめ

海底二万里、凄く面白かった!映画とはまた違った魅力を味わえるのは読書の醍醐味ですね。数々の海を冒険して楽しかったぶん、読み終わった後は寂しさが募りました。なぜか?僕はもっとノーチラス号に乗っていたかったからだよーーー!!

だから本作を読んで思ったのは、僕を数々の魅惑の海に連れて行ってくれてありがとう、って事。アロナクス教授を通して読者は広大な海を、深海に生きる魚や、哺乳類、植物を見る。通常の船では考えられないほどのスピードで世界のあらゆる海を航行するノーチラス号。ヨーロッパ沿岸からアメリカ大陸はもちろん、南極も行きました。

本作が凄いのは、まだ本格的な潜水艦が世に出ていない時代に書かれたという事実。今の潜水艦なら普通の事かもしれませんが、当時の潜水艦は潜水できる深さはせいぜい10mくらいだったようです。その時代に、1000m以上も潜水できるのは夢のような話だったでしょうね。

さらに、本作は魚や生物の名前が大量に出てきます。アロナクス教授の視点で語られるので、必然的に僕たち素人には聞いたことのない名前がわんさか!

そして、この作品が単なる冒険小説と一線を画すのは、設定が理論に基づいている点です。例えば、ネモ船長は作中でもアロナクス教授に数字を使って色々な説明をします。《〇〇へ行くにはノーチラス号の船速で△日かかります。太陽の高度を測るのであと〇〇時間待ちましょう。》という具合に。このように、数字や地形を使って次なる行動の根拠を説明してくれるので、僕たち読者は《なるほど》と納得しながらストーリーを楽しめる。だからこれ、SFなんだと納得しました。

学者のアロナクス教授と従者コンセイユ、銛打ちネッドの3人がネモ船長に世界中の海を連れ回される本作、シンプルなストーリーの中にも沢山の盛り上がりポイントがあるのが魅力です。

また、女性が一切登場しないので、《恋愛》、《エロ要素》など皆無。そういった要素に煩わされず、男の冒険に集中できるのも僕としては良い点だと思います。

別に『女はすっこんでろ』と言うつもりはありませんが、安易に恋愛やエロ要素を使うと一気に作品が陳腐になる事もあるので、海底二万里に関してはこれで良いと思います。

別の視点で見れば、アロナクス教授がネモ船長に対する思いは並々ならぬものがあり、ちょっと怖いくらいです(汗)。

でも、僕もアロナクス教授の気持ちはわかります。ネモ船長は、男が惚れるに足る男です!

そんなパーフェクト超人みたいなネモ船長もを抱えて生きる一人の人間。僕はそこにも物凄く惹かれます。

気になったフレーズ・名言(抜粋)

もはや疑うことはできなかった!全世界の学者たちの好奇心をあおり、
両半球の船乗りたちの想像力をかきまわして誤った方向に導いたこの動物、この怪物、この自然現象は、じつはそれよりもっと驚くべき現象、すなわち人間の手による現象だったのだ!

海底二万里(上巻) P.106

MOBILLIS IN MOBILE 

     N

(動くもののなかにある動くもの)!

*常に揺れ動いている海底の中において、自由に移動できるノーチラス号を指すと思われる。Nは、ネモ船長のイニシャルだと思われる。

海底二万里(上巻) P.127

そう、好きです!わたしには海がすべてです。海は地球の十分の七をおおっており、その息吹は純粋で、健康的です。この広大な無人の領域で、人は決して孤独では無い。
いつもかたわらに命の震えが感じられるからです。
海は自然を超えた、驚くべき存在を担っているのです。海は動きと愛に他なりません。
あなたたちの詩人のひとりが言ったように、海は生ける無限なのです。

ネモ船長 海底二万里(上巻) p.162

わたしたちは、波の刻印がきざまれる砂浜とはちがってしわひとつない、滑らかな、細かい砂の上を歩いていた。その光り輝く絨毯が、まるで反射鏡みたいに、驚くほどの強さで陽光を跳ね返しており、その結果、水の分子のひとつひとつに光が沁み込んでいるように見えた。海面下10メートルの海底が昼間のように明るいと言ったら、人は信じてくれるだろうか?

海底二万里(上巻) P.259

それでわたしにもすべてが理解できた!この空き地は墓地で、
その穴は墓穴であり、細長いものは夜のうちに死んだ男の遺体にちがいなかった!ネモ船長と部下たちは、だれも近づけないこの海底の共同墓地に仲間を埋葬しにきたのだ!

海底二万里(上巻) p.415

さらば、太陽よ!消え去るがいい、光り輝く日輪よ!
このひらけた海の下で眠りにつき、わが新しい領地を六ヶ月にわたる夜の闇で包みこむがいい!

ネモ船長 海底二万里(下巻) p.327

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