こんにちは。ポメラニ・アンパンです。
僕は日がなサラリーマン仕事をしています。
乾ききった心をなんとか動かすための一環として、読書があります。
30歳も半ばを過ぎると記憶や価値観、感動を覚えておく事が難しくなりました。
そこで、読んだ本を記録につけようと思った次第。
ゆる〜く運営していく次第ですので、よろしくお願いします。
という事で、記念すべき第1の読書感想。作品はあの有名なSF作品であります。
ジョージ・オーウェルの『一九八四年』。
この本を読んだきっかけ
まず、タイトルに惹かれました。だってシンプルに「一九八四年」ですよ?
「何だろ?」と思います。そしてこの真っ黒な表紙もクール。
CDとかゲームでも言える事なんですが僕の持論として「シンプルなジャケは名作が多い」。
結果から言えば、名作でした!
実はこの作品、SF小説界隈ではすごく有名な作品らしい!という事まで知っていましたが、今まで読んだ事がありませんでした。
そんな折、僕が大好きで10年以上追いかけていた国内SF小説『天冥の標』シリーズが完結しました。(2019年2月)
完結により、著者の小川一水氏がゲストで来場されるイベントに参加した事で、ポメラニ・アンパンにSF熱が湧きまくってたんですね!だって他の参加者の皆さん、マニアックすぎるんだもん(涙)!
話についていけねーよ!
と思った一方でもっと色んなSF読みたい!という経緯で色んなSF本を買い漁った中の一冊が本書であります。
あらすじ
1950年代、世界は核の炎に包まれた!
そして1984年、世界はユーラシア、オセアニア、イースタシアの3つの超大国に統合された。
舞台はオセアニア。
このオセアニアでは、《ビッグ・ブラザー》を崇拝する《党》が圧倒的な権力を持っている。
どのくらいの権力かというと・・・
- 歴史の改竄
- 住民に敵への憎悪を植え付ける
- 新しい言語を作り、住民の思考の幅を狭める
全ては《党》の権力をより強固なものにするため。
上記に加えて、住民の家には《テレスクリーン》という双方向通信できるテレビ(のようなもの)を設置。屋外にもたくさんの盗聴機器が配置されている。
住民の行動はたとえ自宅にいても《党》により監視されている、恐るべき世界。
テレスクリーンとは、テレビのようなもの。しかし、双方向通信機能があるため、今の我々が使っているテレビと同じく《党》の都合の良いニュースは流れてくるし、反対に自分が立てた音も、テレスクリーンによって収音される。
つまり、住民が部屋で何をしているかが筒抜けになる。映像と音声も《党》に送信されるので、はっきり言ってプライベートは無い。
少しでも《党》に反逆する兆候が認められた場合は《思考警察》によって捕らえられる。
主人公はウィンストン・スミスという39歳の男性。《党》の部署の一つ《真理省》に勤め、歴史を改竄する仕事をしていた。
この世界では、《党》に不都合な事実は書き換えられる。それがたとえ、出版済みの書物や、公開済みの映画であったとしても。そういった媒体を探し出し、処理するのがウィンストンの仕事。
ウィンストンは、幼い頃の《記憶》と《本などに書かれた記録》との間に違和感を拭えなかった。自分が記憶している事と、資料に書かれている記録との齟齬が大きくなっていった。《党》の一職員ではあったが、次第に《党》への不信感や疑念が大きくなる。
《党》への不信感が大きくなる中、《党》の職員である若い女性ジュリアと出会う。ジュリアは表立っては《熱心な党の職員》を装う。しかし、胸中ではウィンストンと同じように《党》への不信感を抱いていた。
二人は恋人となり、逢瀬を重ねる。
古道具屋の店主が、ウィンストンのために監視の目が届かない部屋を用意してくれた。ウィンストンとジュリアは限られた時間の中で、逢瀬を重ね心を通わせる。そこに愛が生まれた。
しかし、幸せは長くは続かない。
ウィンストンとジュリアは《党》への反逆の意志ありとの理由で《思考警察》に捕まる。そして、苛烈なる尋問と拷問を受ける。恐怖の《101号室》には何があるのか。
この拷問が導き出す答えは・・・。
そしてウィンストンとジュリアの二人はどうなってしまうのか。
どこまでも切なく、静かなラストが刺さる。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
行きすぎた監視社会の末路を予言したかのような世界。人の目には喜びや悲しみ、表情は少なく、己を殺していくる人々。それを支配する党。ダークでシュール。『腐ったキャベツの匂いがするアパート』のような表現とともに、重く暗い。まさしくディストピア。
読みやすさ:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
本作品独自のワードが出てくるも、翻訳がわかりやすいため、海外小説にしては読みやすい方だと思う。
ワクワク度:3 ⭐️⭐️⭐️
淡々とウィンストンの行動が描写される。あまりワクワクを感じることは少ない。
ハラハラ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
《党》に反逆の意思を固めたウィンストンの行動にハラハラする。
食欲増幅度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
ジュリアが持ってきたパンやコーヒーは美味しそう。
冒険度:2 ⭐️⭐️
冒険って感じはないかな。お役所勤めだったウィンストンにとって、場末の居酒屋に行くことすら冒険だっただろう。一般的な冒険のイメージはほぼ無い。
胸キュン:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
ジュリアの奔放的な行動やセリフは、男ならかき乱されずにはいられない。仕事の時は、固いがウィンストンと逢う時は素の自分を出してくれるジュリアはこれまた魅力的なんだなぁ。
血湧き肉躍る:2 ⭐️⭐️
バチバチ戦うようなシーンは無い。
希望度:2 ⭐️⭐️
ウィンストン、希望に向かい行動するのだが・・・。
絶望度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
こんな世の中で生活したくない。自分がこの世界に住まなければならないとしたら、地獄だ。
残酷度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
後半、拷問シーンはなかなかのもの。
恐怖度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
肉体と精神を極限まで攻め抜く拷問。そこまでして最終的に党への愛を感じさせてしまうところが真に恐ろしいのだ。
ためになる:2 ⭐️⭐️
教養、知識、精神が豊かになる、的なためになる要素はあまり無い。しかし、この作品を読んだという事は価値ある事だろう。
泣ける:2 ⭐️⭐️
ウィンストンが己の意思を貫けなかった所、人の弱さを思い知らされるシーン。自分御事では無いのだが、悔し涙が少し出るかな。
ハッピーエンド:1 ⭐️
いわゆるハッピーなエンドではない。
誰かに語りたい:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
世界観が凄いので、語れるだろう。しかし、『イングソック』、『二重思考』といった独特の表現が多く含まれるので未読の人に話すのは難しいかもしれない。
なぞ度:3 ⭐️⭐️⭐️
一回読んだだけだと、二重思考とかいまいちよくわからん。
静謐度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
淡々とストーリーが進む。うるさい感じではない。
笑える度:1 ⭐️
1ページたりとも笑える箇所は無い。
切ない:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ラストは切ない。
エロス:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ジュリアと愛し合うシーン。露骨に具体的な感じではなく、普通の描写。
データ
原作タイトル | Nineteen Eighty-Four |
日本語タイトル | 一九八四年 |
著者 | ジョージ・オーウェル (George Orwell) |
訳者 | 高橋和久 |
発行元 | 早川書房 |
コード | ISBN 978-4-15-120053-3 |
まとめ
これは読みやすかった!すんなり入ってくる日本語って良いですね。
この作品、何が衝撃だったかって数々の独自概念やキーワード。《ビッグ・ブラザー》、《イングソック》、《テレスクリーン》、《101号室》、《憎悪習慣》、《二重思考》、《2足す2は5》、《非人間》・・・これらのキーワードは、しっかりとこの世界の背景に生きていて、如何に《党》の権力が強大であるかを示す根拠になっている。これらの効果により、読んでいて「もうこの社会、完全に詰んでるんじゃないか?」と本気で思ってしまうほど『人間を支配するためにとことんやる』圧力を感じて本当に恐ろしいです。まさにディストピア。
本作を読んだ事のメリットは『この有名な作品を読んだんやで!』と言えるだけ(笑)。ハッキリ言って《学び》とか、《明日への希望》、《活力》のようなポジティブな要素は欠けらも無いです。
ただ、この作品が示唆しているのは、行き過ぎた監視社会の成れの果てであったり、権力が集中する事への危惧といったメッセージ性は強いので、色々と考えさせられる作品ではあります。
率直に感じたのは、この作品が1949年にイギリス本国で刊行されている事が単純に凄いなあ、と。「双方向通信ができるテレビ」とか、「監視社会」など、当時から想像できたんでしょうか。
「双方向通信できるテレビ」なんてここ最近出てきましたよね。リモコンの青赤黄色緑でクイズに答えたりするやつ。今の僕達の時代で双方向といってもこの程度。
《テレスクリーン》はこれをもっとヤバイ方向に進化させたものと思えば良いかと。
「監視社会」、中国が今そんな感じですね。
う〜ん、ジョージ・オーウェル、半端ねーな!
この作品『一九八四年』は後の様々な作品に影響を与えたようです。
詳しくはこちらをご覧ください。
気になったフレーズ・名言(抜粋)
純潔なぞ大嫌いだ。善良さなどまっぴら御免だ。どんな美徳もどこにも存在してほしくない。一人残らず骨の髄まで腐っててほしいんだ。
ウィンストン 一九八四年 p.193
セックスをすると、エネルギーを最後まで使い切るわ。その後は幸せな気分になって、すべてがどうでもよくなる。連中はそうした気分にさせたくないの。
ジュリア 一九八四年 p.205
どんなときでもエネルギーではちきれんばかりの状態にしておきたいわけ。あちこちデモ行進したり、歓呼の声を上げたり、旗を振ったりするのはすべて、腐った性欲の現れそのものよ。
心の中で幸せを感じていたら、〈ビッグ・ブラザー〉とか三カ年計画とか〈二分間憎悪〉
とかいった連中のくだらない戯言なんかに興奮したりするもんですか。
もし完全な無条件の服従が出来れば、自分のアイデンティティを脱却することが出来れば、
オブライエン 一九八四年 p.409
自分が即ち党になるまで党に没入出来れば、
その人物は全能で不滅の存在となる。二番目に認識すべきは、権力が人間を支配する力だということだ。肉体を支配する力もそうだが、何よりも、精神を支配する力だ。
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