こんにちは、ポメラニ・アンパンです。あけましておめでとう、と言うべきところなんですが、完全にタイミングを逸脱しての2022年初投稿です!(こんな調子で大丈夫か?!)
なにぶん、去年の年末から読み始めた本がなかなか手強いやつでしたので、思いのほか時間を取られてしまいまして・・・。
それはそうと今年もまたコロナウイルスに右往左往させられそうな雰囲気。もういい加減にして欲しいところです。
では、気を取り直して、今回紹介するのは僕が去年から読んでた作品『文字渦』です!
こちらは円城塔さんの著作であり2019年、日本SF大賞受賞作であります。

読んだきっかけ
円城塔さんの名前は知っていたんですが著作を読んだことはなかったのです。虐殺器官の作者である伊藤計劃さんと共同著作で『死者の帝国』に携わった人だな〜程度の認識でした。そんな折、とある本屋で本作が目に止まった次第。
あらすじ
《表紙裏あらすじより》
「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい。」始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集。
文字同士を闘わせる言語遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出して短編間を渡り歩くルビの旅・・・・・・。小説の新たな地平を拓いた12編、川端康成文学賞・日本SF大賞受賞。
この作品のあらすじを書くのは非常に難しい。12編の短編から成るのだが、いずれも「文字」を主役としたエピソードの数々。文字を主役とする、と言いつつもその視点はどれも意表を突くものばかり。
真面目な考古学かと思えば、今流行りのカードバトルゲームの様相を醸し出す話や、仏教や真言宗の話、ルビが本文と離れて旅する話もあり、油断していると珈琲を吹き出しかねない程の笑えるネタも仕込まれている。
我々が普段何の気もなしに使っている日本語。日本語を構成する「文字」そのものがいかにして今の形になったか、などのルーツのようなことにも触れているので、勉強半分面白半分に読むにはちょうど良い!そして、読むと分かる、ああ、これもSFなんだ〜!!と。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
始皇帝、兵馬俑、紙、ディスプレイ、シンタックスハイライト、プリンタ、紫紙金字金光明最勝王経、筆、硯、文字レイアウト、自動筆、ササン朝ペルシャ、遣唐使、日本書紀、シェルピンスキー・ギャスケット、サンスクリット、三葉結び目、Unicode、篆書、楷書、排他的論理和、かな・・・・。
文字は楔形文字の発見に始まり、時代とともに記される媒体が石から紙へ、そして電子媒体に移る。文字を書く道具も然り。釘とハンマーで石に刻む道具から紙へ素早く滑らかに書くことに適した筆、そして筆すら必要のなくなった新たなる媒体・・・。ツールや時代背景とともに書体を変えて変身し、進化する文字たち。めくるめく文字たちの変遷をその目でしかと見よ!
読みやすさ:3 ⭐️⭐️⭐️
出てくる語彙が一見して頭に入ってこないことが多いので、スマホ等で検索しながら読むのをおすすめ。僕は初回、何も検索せずに読んだけど半分くらいしか内容が頭に入らなくて、2周目読むときはスマホで検索しながら読みました。そうすると、著者の言わんとしている事がわかるので、そこでようやく本作の面白さがわかります。
ちょっと大変かもしれませんが、わからない語彙があったら調べてから読み進めた方が楽しめます!
※巻末の木原善彦さんの解説でも検索しながら読むことをオススメされています。
ワクワク度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
先が全く読めない、という点ではワクワク?
ハラハラ度:3 ⭐️⭐️⭐️
ハラハラは、今作には期待できないなぁ。
食欲増幅度:1
食欲が湧く描写はなかったはず。
冒険度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
ルビが冒険するよ。
胸キュン:3 ⭐️⭐️⭐︎
紀貫之の詩はなかなか切ないものがある。
血湧き肉躍る:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
闘字は文字通り文字で闘う。
希望度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️⭐︎
初めて読んだタイプの作品だった。と同時に、文字の変遷と進化はこうしてみると凄いと思った。つくづく、この楽しみは日本語でないとわからないと思うので、日本人でよかった!
絶望度:1 ⭐️
絶望的シーンは無い。しかし、文字はその国の根幹だと改めて思う。
残酷度:1 ⭐️
特になし
恐怖度:1 ⭐️
恐怖を感じるシーンはなかったが、文字が国を支えることもあれば国を傾けることもあるという内容に驚愕した。
ためになる:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎
今までここまで「文字」にスポットを当てた作品があっただろうか?否!漢字もかなも使い、漢字においては複数の読み方をし、送り仮名や句読点、同じ文字を連続しない、等の謎ルールを盛り込みまくった日本語、マジですげーって思った。
泣ける:1 ⭐️
あんまり泣くところは無いかなあ。
ハッピーエンド:3 ⭐️⭐️⭐️
ハッピーエンド?
誰かに語りたい:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
すすめるなら「文字が主役のSF小説」で。
なぞ度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
色々ぶっ飛びすぎて謎だらけ。⇦褒め言葉
静謐度:1 ⭐️
ルビが勝手に違うことを言い出すんだから静謐なわけがない(笑)
笑える度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️⭐︎⭐︎
アミダ・ドライブのあたりでもうダメだったw 面白すぎるw
切ない:3 ⭐️⭐️⭐️
一字また一字と倒されていくルビたち・・・。
エロス:1 ⭐️
無し!!
データ
タイトル | 文字渦 |
著者 | 円城塔 |
発行元 | 新潮文庫 |
コード | ISBN978-4-10-125772-3 |
まとめ
僕はとんでもない小説に出会ってしまった!
何なのだ?!これは。僕は一体何を読んでるんだ!?
文字渦、読みました。1周目では内容がほとんど曖昧にしかの理解できなかったので2周読んでからこの記事書いてます!
いや〜〜でも、この歳にして初体験した気分です!小説の新たな地平を拓く、と背表紙にありましたが、まさに新感覚!凄かった!!
最初は兵馬俑の話から始まったので古代中国から現在の漢字に至るまでの道のりを綴った真面目な話かと思いきや、次の章では光る文字云々という話で「?」と思いつつ読んでいると文字が闘い出す話やら何やらで予想の斜め六十度上から来る展開に翻弄されっぱなしでした。
あまり話すとネタバレになり、未読の方の面白さを半減してしまうかもしれないので、この辺にしときます。でも、これだとなかなか本作の魅力をうまく伝えられない。なので、それとなく本作の魅力の一端である画像だけ置いていく。



これらの画像だけ見ても何のことかわからないだろうが、着目すべきは表現方法!既存の方法に囚われず、文字で表現できる方法をこれでもか!と見せつけてくれるエンタテインメント性が凄いのだ!
ぜひ、この一大文字詩をご堪能ください!
気になったフレーズ・名言(抜粋)
不滅を滅ぼす矛を用いて、滅を先に滅するのだ。
嬴
文字渦 p.26
一つの文字を消し去るには、必ずしもその文字を覆滅する必要はなく、出鱈目な資料を大量に作成するという方法もある。偽文字が本物の文字の十倍、百倍量存在すれば、真の文字の姿は多数決的に失われることになるはずだった。
文字渦 p.34
白黒を反転するにはまず全てを灰色に塗り込めてしまうのが良手であって、人は灰色を眺めるうちにそれがやや黒よりだとか白よりだとか勝手に言いだすものである。
文字渦 p.149
長安に来て思うのは、どうやら自分が馴染むのは、特定の言葉ということではなく、言葉というものに対してらしいということである。個別の各国語より純粋に、言葉というもの自体が好きなのだ。
文字渦 p.152
言葉はまず音を用いるもの。文字は音を写すもの。何かの言葉を様々の文字で記すことができるわけです。ペルシア語をシリア文字やアラビア文字で記すことだってできます。アラム文字はそれまで世界共通語だった楔形文字を滅亡においやった文字です。
阿羅本
文字渦 p.160
国家天下を相手にするまじないは、公明正大、誰の目にもそうとわかるはずなのにそれとは見えず、堂々と流通するものなのではないか。
文字渦 p.168
文字を書くとは、国を建てることである。
文字渦 p.175
天書は何も、天地開闢のはじまりにだけ現れるというものでもないのです。皇帝の徳が高ければ現れ、修行者の目の前に突然姿をみせることもあるとか。
許邁
文字渦 p.286
言葉あまりて、心足らず
文字渦 p.372
文字の歴史は文字がうまれたあとにしかない。それ以前の歴史をこうして語ることができるのは、文字が時間を遡る力をそなえるからで、過去をひきよせ、未来を呼び込み、頭の中の考えを、他人の心をつくりあげ、男女のなかをやわらげるのもまた文字の力だからである。
文字渦 p.393
入手案内
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