ゲルマニア

サスペンス

どうも、こんにちは。ポメラニ・アンパンです。3月も残すところあとわずか。も〜すぐは〜るですねぇ〜♪ ちょっと気取ってみませんか〜♪ってな感じで桜もちらほら咲き始めて春の到来が実感できます!

それにしても世の中本当にわかりません。前回の更新が2月だったのですが、わずか1ヶ月しか経っていないのに、世界を揺るがすロシアとウクライナで戦争が起きてる・・・。ニュースを見ても悲惨な出来事ばかりで、これは本当に現実なのか?と思ってしまいます。桜が美しいのに、一方で銃弾に倒れ住むところも奪われている人たちがいると思うと悲しくてなりません。一刻も早く終わって欲しいです。

さて、今日紹介するのは『ゲルマニア』という推理小説。著者はハラルト・ギルバースというドイツ出身の人。今は舞台監督をしているそうな。

読んだきっかけ

某中古チューン書店にて発見。表紙の雰囲気と値段、本の状態が綺麗だったので手に取ってみた。あらすじを読むと戦時中のユダヤ人の話。興味を惹かれて購入!

あらすじ

<文庫本背表紙より抜粋>

1944年ベルリン。ユダヤ人の元敏腕刑事オッペンハイマーは突然ナチス親衛隊に連行され、女性の猟奇殺人事件の捜査を命じられる。断れば即ち死、だがもし事件を解決したとしても命の保証はない。これは賭けだ。彼は決意を胸に、捜査へ乗り出した・・・。連日の空襲、ナチの恐怖政治。すべてが異常なこの街で、オッペンハイマーは生き延びる道を見つけられるのか?ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作。


かつて殺人事件を担当した敏腕刑事のオッペンハイマーはユダヤ人の初老の男。今は刑事の職から離れていた。ナチスが幅を利かせ、ユダヤ人に対し圧政を強いている状況下。いつナチス親衛隊に狙われ、連行されるかしれない不安は、ユダヤ人達を怯えさせた。当然オッペンハイマーも例外ではなかった。

そしてついに、ナチス親衛隊=SSに連行され、SS大尉フォーグラーと出会う。フォーグラーはオッペンハイマーに命じる。ナチス親衛隊が捜査中のとある殺人事件、その捜査に協力しろと。ユダヤ人のオッペンハイマーに断れるはずもなかった。

死体を検分したところ、殺されているのは若い女性。死体は慰霊碑に向かって脚を広げる格好で横たわっていた。オッペンハイマーは死体の局部が摘出されていることを確認し、容易ならざる事件だと思った。

オッペンハイマーは空襲の恐怖とナチスの目が光るこの街で、妻の身を案じながらもフォーグラーらSSに協力し殺人事件を紐解いてゆく。ところが、捜査中に同じような事件がまた発生した。

同一犯による連続殺人の可能性も視野に入れて捜査を進めるオッペンハイマーとフォーグラー。オッペンハイマーは犯人を見つけられるのか。

雰囲気

1944年、第二次世界大戦、ドイツ、ベルリン、ユダヤ人、ナチス、ヒトラー、秘密国家警察ゲシュタポ、殺人事件、強制収容所、命の泉協会レーベンスホルン、捜査、推理、潜伏、尾行、国外脱出・・・

表紙絵とあらすじから、少々小難しい戦記ものだとイメージしていたのだが全く違った。蓋を開けてみると、戦時中という時代背景を生かした推理ミステリー小説だった!

さらに付け加えると、主人公オッペンハイマーとナチス親衛隊大尉のフォーグラー、物語が進むにつれ互いに信頼感が芽生え、若干BL臭も漂うほどの奇妙な友情を築くに至る。

読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎

酒寄進一氏の翻訳が良いからであろう、非常に読みやすい。短い文章で区切ってあり、情景が想像しやすい。

ワクワク度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️

猟奇殺人をどう紐解いてゆくか。ナチスの圧政から自分と妻の身を守る方法はあるか。この二つの命題が常に付きまとうため、読んでいる側は次の展開がどうしても気になる。

ハラハラ度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

気を抜くとナチスに捕らえられ自由を奪われるという危うい立場にいるオッペンハイマー。さらに、敗戦色が濃くなっているドイツにおいて空襲という物理的危機にも晒される。この状況下で手がかりの少ない殺人事件の捜査をするという状況は、否応なく読む側をハラハラさせる。

食欲増幅度:2 ⭐️⭐︎

空襲を受け、フォーグラーとともに地下食糧庫で見つけた缶詰を食べるシーン、妙に美味そうだと感じた。極限状況で食べ物、飲み物があるだけで計り知れない心強さってあるんだな〜。

胸キュン:4 ⭐️⭐︎⭐️⭐︎

オッペンハイマーと関わる女性はいるんだけど、最も胸キュンついてくるのは何故かフォーグラー。読めばわかる。

ページをめくる加速度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐⭐️

話の展開も早く、どんどん読める。

希望度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎

途中までは正直これどうなるんだ?と半ば暗い結末を想像するも、救いのある結末だと思った。

絶望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎

戦争中でナチスに目を付けられるユダヤ人で、犯人を見つけられないと自分の命も危ういというかなり絶望的な状況なのに、本作ときたら不思議と絶望感はそれほど感じなかった。やはりフォーグラーの存在がデカい!

残酷度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️

オッペンハイマーが検分・捜査する死体はどれも損壊がひどく見るに堪えない酷い有様。他にも暴力・拷問の描写もあり、そこそこ残酷な表現もある。

恐怖度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

戦争、正体不明の殺人犯、自分の生殺与奪権を握るナチス親衛隊の目。オッペンハイマーは常時この3つの恐怖を抱えながら生き抜かざるをえない。必然的に読者もこれらの恐怖に晒される。

ためになる:5 ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎

全てが真実ではないだろうが、戦時中のナチス、ユダヤ人、命の泉協会、ドイツとその周辺諸国の様子などが分かりやすく描かれているので、歴史を知る材料になる。

泣ける:1 ⭐️

そこまで泣くシーンはないかなぁ。

読後感:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐️

ほっとしたのと同時に「いや〜、面白かった〜」と言ってしまえるほど楽しめた!

誰かに語りたい:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎

見所はやはりオッペンハイマーとフォーグラーの関係性。敵対している間柄から、互いの信頼、そして友情と呼んでもいい関係に至る。人間関係を描くドラマが好きな人には刺さると思う。

なぞ度:1 ⭐️

特に気になった謎はないかな。

静謐度:2 ⭐️⭐️

背景描写には静謐さを感じる。

笑える度:2 ⭐️⭐️

おかしくて笑える、というよりオッペンハイマーとフォーグラーのやりとりが微笑ましいというか・・・。

切ない:1 ⭐️

切ないシーンはそこまで無い。

エロス:1 ⭐️

ほとんどなかった。

データ

原作タイトルGERMANIA
日本語タイトルゲルマニア
著者ハラルト・ギルバース (Harald Gilbers)
訳者酒寄進一
発行元集英社
コードISBN978-4-08-760706-2

まとめ

正直全く期待せずに買ったんですよ。タイトルや表紙を見て「小難しい戦争考察かいな」と思っておりました。ところがどっこい。なんと推理小説じゃありませんか、奥さん!

しかも、主人公はユダヤ人。主人公に殺人事件の捜査を強いるのは、信頼して良いのかもわからないナチス親衛隊のフォーグラー大尉。え?これめちゃくちゃ面白いんやない?と思って読み進めると、まあ面白い面白い!!

時代背景としては第二次世界大戦最中のドイツベルリン。ヒトラー率いるナチ党が権力を握り、ユダヤ人を迫害している。戦況は芳しくなく、ドイツ側に敗戦色が見え始めていた、という状況下で起こる殺人事件。

ナチ党としても殺人事件を放置するわけにもいかず、フォーグラー大尉が捜査を進めていたが、手詰まりになった。やむをえず、元敏腕刑事だったオッペンハイマーに捜査に協力するよう迫る。

ここだけ見ても面白いのは間違いない!

読んでいて緊張感が走るのは、オッペンハイマーを初め、彼の周りのユダヤ人たちが隠れ住むアパートにナチス親衛隊が接近した時や、知人が連行されていったというシーン。なんとも言えない緊張感が常にある中、繰り広げられるSS大尉とユダヤ人刑事の駆け引き。フォーグラーに生殺与奪権を握られている限り、失敗すれば命はなくまた成功しても未来は分からない。

それでも腹を括ってやるオッペンハイマー。そして、次第に愚直だが理論的に物事を考察し、着実に犯人に近づいてゆく姿を常に見ていたのは皮肉にもナチス親衛隊大尉であるフォーグラーだったのだ。

物語の中で、空爆に晒されオッペンハイマーとフォーグラーは二人して地下に閉じ込められてしまう。生き延びるために二人は互いの立場を超えて協力しあう束の間の時間・・・。

ここから先は是非ご自身で読んでもらいたい!

気になったフレーズ・名言(抜粋)

自転車の乗り方は一度覚えたら、簡単には忘れないものだ。ちがうか?

オッペンハイマー
ゲルマニア p.124

ここで日々繰り広げられているのは、独ソ戦などの今をめぐる戦闘とはまるでちがう、はるか遠い未来を見据えた闘いなのだ。ナチがここで武装しているのは最新式の殺人機械ではなく、人間という資源。


ゲルマニア p.151

その日はじめて、人々は自らの国の虜囚となったことに気づいた。ヒルデも路面電車で黒焦げになったシナゴーグのそばを通りすぎた。路面電車に乗っている人々が勝利に沸くことはなかった。「反ユダヤ主義はいいが、やりすぎだ」と、乗客の誰かがつぶやいた。だが同調する者はいなかった。みんな、臆病だったのだ。そして臆病な自分を恥じた。それはヒルデも同じだった。

ゲルマニア p.182

「ここから出られたら、新しいのを工面してやる。何錠欲しい?千錠か?」

オッペンハイマーは真顔になった。千錠とは想像を絶する。「もらえるなら……」

「もちろんだ。まずはふたりで生き延びないとな」


ゲルマニア p.200

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