こんにちは、ポメラニ・アンパンです。前回の投稿から間が空いてしまいました。個人的に仕事環境も変わりバタバタしてて、本を読む時間をあまり取れませんでした。
それにしても連日のニュースで感染者がどんどん増えてますね。この季節、外に出たい人が多いのでしょうが、僕ポメラニ・アンパンは元々インドア派でして、普段からほとんど外に出ません。なので、緊急事態宣言が出されても、僕の生活そのものはそれほど大きな変化はないのですが、ちょっと何かを買い出しに行こうとしたお店が休業だったり、微妙な影響はあります。
しかし、今はネットショップが便利。店舗で買えない物は、アマゾンで購入できますし、意外と外に出なくてもなんとかなります。仕事に行く以外は。
とまあ、愚痴っても仕方がないので前置きはこの辺にして、今日紹介する本はレイモンド・チャンドラーの『プレイバック』です。
読んだきっかけ
レイモンド・チャンドラーの作品は読んだ事が無く、『ハードボイルド好きなら読んだ方が良い』と誰かに勧められたか、何かに書かれていたのか忘れましたが、頭の片隅にありました。他の目当ての本を探している中、たまたま目に入った本書を手に取ったのがきっかけです。表紙のデザインと雰囲気から選びました。
あらすじ
私立探偵フィリップ・マーロウは、弁護士のクライド・アムニーなる人物から半ば強引に仕事を依頼される。とある女が『スーパーチーフ』という電車から降りてくるので、どこに落ち着くか確認して報告してくれ、と。
その女はエレナー・キング。年齢29歳、赤身がかった髪色。電車から降り、コーヒーショップに入った彼女を見張るマーロウ。エレナーに一人の男が近づいて、何やら交渉している。交渉というより強迫だ。男と別れたエレナーは、タクシーに乗り込む。尾行するマーロウ。
エレナーが宿泊するであろうホテル『エル・ランチョ・デスカンサド』に先回りするマーロウ。フロント係に一芝居うち、目的の女の隣の部屋を確保する事に成功。
隣の部屋で聞き耳を立てていると、女を脅していた男が再びやってきたのを確認したマーロウ。男はミッチェルというらしい。ミッチェルとエレナー(ここではベティ・メイフィールドと名乗っている)の会話を壁越しに聴くマーロウ。どうやら、ミッチェルがベティに金の都合を要求しているようだ。ミッチェルの声はマーロウに取って甲高く、気に入らない。
ミッチェルとベティの会話が終わったあと、彼女の部屋に直接乗り込むマーロウ。そこで彼女がなぜそのような行動を取っているか、強迫してきた男は何者かを問いただす。しかし、そこへミッチェルが戻ってきて修羅場に。瓶で頭を殴られ気絶するマーロウ。
目を覚ますとベティの姿は無かった。様々な情報をもとにベティの行方を突き止めた後、もとの『エル・ランチョ・デスカンサド』の部屋に戻る。そこへベティが戻ってきて、マーロウに言う。
『今自分が宿泊しているホテルのベランダで、男が死んでいる。ミッチェルを殺してしまった』と。それを確かめに行ったマーロウ。だが、死体はどこにも無く、痕跡すら無かった。
ベティ・メイフィールドは全てをマーロウに話しているわけではなかった。マーロウも直感的に彼女が『何か』に怯えている事はわかっているが、それが何なのかがわからない。
この女は何に怯えているのか。依頼人であるクライド・アムニーにも腹に何か隠してそうだ。マーロウは儲かりそうもないこの依頼の真相を突き詰めようと動く。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
導入部、いきなり弁護士から依頼が入り、気怠そうなフィリップ・マーロウ。企業マンではなく、私立の探偵っぷりを垣間見つつ小気味良いテンポで話が進む本作。いわゆる推理小説という感じでは無く、探偵が振り回されるのを俯瞰で見る感じ。めちゃめちゃバイオレンスでクールなのを期待すると肩透かしを喰らう。良く言えば誰でも読みやすい、悪く言うとクセが無さすぎる。
読みやすさ:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
訳者の清水俊二のなせる技か、すっきりと読みやすい文章。いろいろな台詞があるが、ちょっと気取った感じのや、ストレートに主張をぶつけるもの、牽制するもの、笑いを誘うもの、など意外と豊富でスラスラ読める。
ワクワク度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
わりと展開が早いので、次はどうなるんだ?というワクワク感はある。序盤から中盤は特に。
ハラハラ度:3 ⭐️⭐️⭐️
あまりハラハラ、手に汗を握る感じはなかった。
食欲増幅度:1 ⭐️
無い。
冒険度:3 ⭐️⭐️⭐️
本作の基本ミッションが、『女を追う』だけだから、あまり冒険的な感じは無い。
胸キュン:1 ⭐️
特になし。
血湧き肉躍る:3 ⭐️⭐️⭐️⭐️
銃を持った男とのやりあうシーンはちょっとだけある。
希望度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
マーロウが最後、真実を突き止めた際、相手の男から口止め料を受け取らなかった事。正義、良心と言えようか、そういった事がきちんと描かれている。僕たちは、誰しもそのように正義を貫き、良い事をなしたいと思いながらも現実ではなかなかできない事もある。
しかし、自由に書くことのできる小説において、そんな人の理想を体現できる人物がいるのは嬉しいと思うのです。
絶望度:1 ⭐️
死んだのは女を脅していた悪党だったので、何の絶望感もない。むしろスッキリ。
残酷度:2 ⭐️⭐️
ほとんど無い。死んだ後の男の遺体をマーロウが確認しに行くシーンがある。そこくらいかな。
恐怖度:1 ⭐️
恐怖を感じる描写は・・・無いなあ。
ためになる度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
あの名台詞「しっかりしていなかったら〜」に会えただけで、本作を読む価値がある。
泣ける度:1 ⭐️
泣ける話は無い。
ハッピーエンド:3 ⭐️⭐️⭐️
読後感はあっさり軽め。マーロウにとって、一文の得にもならなかった事件。事件後、昔の女から電話でアプローチされてて、個人的には『なんだかなぁ〜』という印象で、あっさり物語が終わる。まあ、ハードボイルドってだいたいこんな感じよね。
誰かに語りたい度:2 ⭐️⭐️
まあ、特に語る必要も無いかなぁ・・・。僕が生粋のチャンドラーファンだったら、他のファンと話してみたいけど・・・。
なぞ度:1 ⭐️
謎は無い。
静謐度:3 ⭐️⭐️⭐️
いわゆる日本的な静謐では無い。しかし、うるさくも無い。
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️
クスッと笑えるところは所々ある。
切ない:1 ⭐️
これだけ働いてほとんど報酬がなかったんじゃ無いかってくらいのマーロウ。ある意味切ない。
エロス:2 ⭐️⭐️
依頼人の秘書、今回のミッションの女、とそういうシーンあり。
データ
タイトル | プレイバック |
原作タイトル | PLAYBACK |
著者 | レイモンド・チャンドラー(RAYMOND CHANDLER) |
訳者 | 清水俊二 |
発行元 | 早川書房 |
コード | ISBN978-4-15-070453-7 |
まとめ
恥ずかしながら、レイモンド・チャンドラー作品は今まで読んだ事が無かったのです(爆)!今作は、たまたま目に入ったから買ったという有様・・・。しかも、巻末にある訳者・清水俊二さんによると本作はレイモンド・チャンドラー作品最後にしてちょっと他の作品とは毛色が違うとの事。
たぶん、チャンドラーファンからしてみれば『おいおい!なんでその作品選んじゃったの?馬鹿なの?』と突っ込みをいただけるんではないでしょうか(笑)。
ファイナルファンタジーに例えるなら、4、5、6、7あたりをやらずに12をプレイする感じでしょうか。。。
ぶっちゃけ本作、つまらなくはないけどあんまり面白くもなかったな〜、というのが本音。
読む前の印象:フィリップ・マーロウって渋い私立探偵、「うかつに俺に近づくなよ」的なセリフで相手をビビらし、冴える推理で「逃がしゃしねーぜ。俺と仲良く、おまわりんとこ行こか?」と決めるんだよな?
読んだ後:う〜ん、マーロウ意外と頼りになるんだか、ならないんだか・・・。そもそも本作、謎あんまり無くね?
といった感じで少々肩透かしを喰らってしまいました・・・。
本作を読んだ限りでは、フィリップ・マーロウは意外と女好きだなぁ、と思いました。なんせ、冒頭、依頼人の秘書の女が仕事の詳細を教えにマーロウの家に来るのですが、そこで「あんまり脚ばかり見ないで頂戴!」と言われる始末。
しかし、譲れない所は文句を言ったり体を張ったりする正義感はビシビシ出ていて、これは好感が持てます。拳銃を持った男に突進していく勇気はさすがですね。
僕ポメラニ・アンパンにとって、本作がレイモンド・チャンドラーの入り口になったわけですが、他の方が言うように、フィリップ・マーロウが登場する作品は他にもあって、特にチャンドラーのファンの間では『長いお別れ』は本当に名作との事。機会を作ってぜひそっちを読んでから改めてフィリップ・マーロウもといレイモンド・チャンドラーの印象を自分の中で更新せねば、と思いました。
気に入ったフレーズ・名言(抜粋)
誰でも自分から完全に逃げさることはできないのだ。
プレイバック
p.44
私を大へん愛してくれていた人間が頭のうしろにのせてくれたのだ。
私をそれほど愛してくれていなかった人間が頭のうしろをなぐりつけたのだ。おそらく、同じ人間だったであろう。
プレイバック
人間は時によって気が変わるのだ。
p.60
しっかりしていなかったら、生きていられない。
フィリップ・マーロウ
やさしくなれなかったら、生きている資格がない
プレイバック
p.266
入手案内
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