こんにちは、ポメラニ・アンパンです。日本全国に緊急事態宣言が出されましたね〜。まさか、自分が生きている時に緊急事態を経験することになろうとは・・・。
誰しも経験したことのない、前例のない状況下におかれ、何が正しいか間違っているか分からなくても、行動するしかない。今は、皆が不安を抱えている。そんな中で、今僕が言えることは一つ。
本はあなたを裏切らない!
不安な時も、寂しい時も、心をかき乱された時も、本はあなたのそばにいる。
つまり、あなたは一人ではなく、今まで読んだ本の登場人物達があなたの心に存在し、ガヤガヤと騒いで、喚いて、笑って、泣いて、飯食っているのです!
・・・なんてちょっとカッコイイ事を言ってみましたが、なんか最近そう思えるようになってきました。僕ポメラニ・アンパンも決して人付き合いが上手いわけではなく、下手すりゃコミュ障レベルです(爆)。以前はその事を気にしていましたが、今はそこまで気にしなくなりました。
『いろんな奴がいていーじゃん!』と。
さて、前置きが長くなりました。この前置きだと、さぞ素晴らしい物語を紹介してくれるんだろう、と思っているあなた!チッチッチ。甘いですね!
この前置とは何の関係もない、今日紹介する本は、本サイト初の新書!
更科功の『残酷な進化論 -なぜ私たちは「不完全」なのか- 』です。
読んだきっかけ
本屋さんでたまたま目に入った本作。僕はノンフィクションはあまり読みません。嫌いじゃないんですが、読み出したらキリがないからです。小説はちゃんと終わりどころを作ってくれていて、作品を終わらせてくれます。しかし、ノンフィクションの場合、その本は読めば終わるんですけど、終わった後の読後感は小説と明らかに違います。
そんな中、本作はタイトル『残酷な』の部分と、背表紙に書いてあった『「人体」をテーマに進化の本質を描く』という文言に惹かれて、買ってしまいました。
概要
人類は、進化の頂点のように言われているが、著者曰く決してそうではない。今を生きる僕たち「ヒト」は、欠点だらけで、優れた内臓や期間を持つ生物は他にたくさんいる。だから「ヒト」は進化をして今に至り、「偉い・優れている」と思っている人にとって、本書は残酷な真実を告げる事になる。
ちなみに著者の更科功は東京大学大学院理学系研究科博士修了、博士。つまり、この道のプロの方です。
*以下に印象に残った話の一部を要約しました。雰囲気が伝われば良いのですが・・・。
【印象に残る話 要約】
<心臓の話>:人の心臓は4つの部屋に分けられていて、一見うまくできている。しかし、心臓自身に血液を送るための冠状動脈は細い。激しく体を動かして血液が一番必要な時に、細い冠状動脈が頑張るので、負荷が大きければ狭心症や心筋梗塞が起きやすくなる。
これは自然淘汰の結果こうなった。自然淘汰とはより多く子供を残せる形質を増やす事。つまり、子供を多く残せるのであれば、子供を残せる年齢を過ぎた個体が狭心症や心筋梗塞で死のうが関係ない。これが自然淘汰の恐ろしいところ。
<大人がミルクを飲む事>:ミルクを飲める大人は遺伝性疾患『ラクターゼ活性持続症』である。哺乳類の赤ちゃんは母乳を飲んで育つ。ミルクに含まれるラクトースを分解する酵素がラクターゼ。赤ちゃんの栄養源はこのラクトースなので、赤ちゃんはラクターゼを作る。しかし、大人になれば母乳は必要ないので、ラクターゼも赤ちゃんに比べ1/10くらいしか作られなくなる。昔の大人はミルクを飲んだら下痢腹痛を起こしていた!
しかし、酪農が始まりミルクを飲む機会が増えた結果、ラクターゼ活性持続症の人はミルクが飲めるので・・・。より多くの栄養を取り入れ、子供を多く作るのに有利になったので、そのような個体が増えた。その結果、多くの大人が牛乳を飲めるようになったのだ。
<脊椎と腰痛の話>:地球上には昆虫が多いが、脊椎を持つ脊椎動物もたくさんいる。僕たち人間も脊椎動物だ。脊椎の役割は貯蔵庫だったのでは?と考えられている。何の?リン酸カルシウムだ。骨の形成に役立ち、硬いリン酸カルシウムは脊髄を守るのに適する。脊椎が発達する事で、周りに筋肉をつけることもでき、動物の動きは良くなった。しかし、人間は二足歩行。本来地面と水平になる脊髄だが、人間が立ち上がってしまったので、脊髄も地面と垂直方向に・・・。これにより、腰を支える部分に多大な負荷がかかり、腰痛という忌まわしき現象を抱える事になった・・・かも。
とはいえ、他の動物、例えばチーターはとんでもないスピードで走るので、腰への負荷は相当なはず。だとしたら人間の腰痛は歳のせいではないか。なぜならチーターは腰痛が発症する年齢に達する前に死んでしまう事が多いから。
このような人間と他の生き物に関する話が他にもまだまだあります。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
真面目な本。内容は至って真面目だが、おカタい専門書のような文言はほとんどなく、僕のような一般人でも分かるし、『へえ〜〜!!』とか『ほほう・・・。そういう事か。』と理解ができる内容になっている。
読みやすさ:10 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
この手の本にしては無茶苦茶読みやすい。わかりやすい言葉を使っているだけでなく、要所要所に挿絵がある。さらに、僕ら一般人でも分かる例え話を入れてくれているので、これも読みやすさに一役買っている。
ワクワク度:3 ⭐️⭐️⭐️
ワクワク度というより驚きの方が多い。
ハラハラ度:1 ⭐️
まあ、この手の本には無いでしょう。
食欲増幅度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
著者も言っておられる。生き物で一番大切なのは食う事だと。そう、僕たちは食事を疎かにしてはいけないのである。専門家がこう言っておるので、僕はよりちゃんと食事をしようと思った。というわけで、食欲増幅度アップ!
冒険度:1 ⭐️
特になし。
胸キュン:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
一般的な胸キュンとは違う。生物の進化や自然淘汰の仕組みなどに圧倒される。
血湧き肉躍る:2 ⭐️⭐️
実際にそのような描写はないのだが、生物のことごとくは生存闘争をしているとの内容。血湧き肉躍らなくても、戦いは繰り広げられている。
希望度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
人間以外の動物は、子孫を一体でも多く残すため、常に生存闘争を行っている。そう考えると、人間に生まれて良かったなあ・・・と思わせてくれる。まあ、人間も大変だけどね。
絶望度:3 ⭐️⭐️⭐️
あまり絶望するほどの残酷な内容ではなかった。しかし、人間が身につけている服や、道具などがもし使えなくなったら、地球上で最弱なんだろうなぁ・・・と思わずにはいられない。
残酷度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
タイトルに『残酷』というワードがあったので、もっと凄いのを期待したのだが、期待したほどではなかった。しかし、本書で扱う残酷さとは生物の進化や成り立ちにおいての著者なりの表現。自然淘汰 -子供を多く産むという一点にのみ最適化される生物の特性-がその際たるところだと思う。
言い換えれば子供を多く埋めさえすれば他の要素はかなぐり捨ててる訳だから・・・考えようによっては自然淘汰って残酷!
恐怖度:1 ⭐️
恐怖感はない。
ためになる:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
生物のなかで、人間とはどのような存在かを知ることができる。また、頭に入りやすいトピックが多く、ちょっとした雑学として知識を得ることができる。
泣ける:1 ⭐️
泣く要素が無い。
ハッピーエンド:3 ⭐️⭐️⭐️
人は決して特別な生物じゃないよ、という事がよく分かる。
誰かに語りたい:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
酒の席で話題のネタにはできるかも。営業職の人ならネタになるかもしれない。使いどころはだいぶ限定されると思うけど。
なぞ度:1 ⭐️
特になし。
静謐度:1 ⭐️
該当せず。
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️
著者独特の、生物や人間に対する『ありゃりゃ残念だな〜』という気持ちが文章に現れている部分があり、それがちょっと面白い。
切ない:1 ⭐️
特になし。
エロス:1 ⭐️
ない。
データ
タイトル | 残酷な進化論 -なぜ私たちは「不完全」なのか- |
著者 | 更科功 |
発行元 | NHK出版 |
コード | ISBN978-4-14-088604-5 |
まとめ
僕としては珍しく小説以外の本を読みました。これはこれで面白かったですね!普段自分があまり触れないジャンルというのは、良くも悪くも新鮮です。
表紙とタイトルにつられて買った本作。どんな恐ろしい残酷な事が書いてあるんだろう・・・、とビクビクしながら読み始めましたが、予想を遥かに裏切るとっつきやすさですぐ読み終わりました。
内容をざっくりまとめると、『人間、大したことねーよ』です(爆)!
この意見の根拠として、人間と他の動物の器官を比較されていたり、体の仕組みや繁殖方法の違いなどをもとに丁寧に説明されています。
今まで知らなかった事を知る、というのはやはり心躍るし楽しいですな!
気になったフレーズ・名言(抜粋)
一方、私たち哺乳類やカエルには膀胱があり、大量の水と一緒に尿素を捨てている。明らかに爬虫類や鳥類より、水を無駄に使っている。私たちやカエルは、鳥類や爬虫類ほどは陸上生活に適していないのだ。
残酷な進化論
P.64
たいていの動物は、口のあるほうに進む。だから止まっていても、
どちらが前かがわかる。口のあるほうが前なのだ。ちなみに、植物には口がないので、前や後ろはない。このように、口はとても大切な器官である。口から食べ物を入れて、消化管で消化・吸収して、肛門から排泄物を出すというのが、動物の基本的な生き方だ。
生きる上で一番大切なことは、食べることなのである。
残酷な進化論
p.74
平和に棲み分けて暮らしている生物を見ると、私たちはつい生存闘争が起きていることを見逃してしまう。でも、生存闘争は起きている。なぜなら、生存闘争というのは、「天寿を全うせずに死ぬ生物がいる」ことだからだ。先ほど述べたように、「天寿を全うせずに死ぬ個体がいない生物」はいない。そういう生物は絶滅するか、無限に増えるかのどちらかだからだ。
残酷な進化論
P.184
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・BookOffで入手 *2020.4.22時点で取り扱いなし
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