こんにちは、ポメラニ・アンパンです。
突然ですが、焼き鳥は好きですか?焼き鳥、美味しいですよね!暑い日なんかは、ビール片手に焼き鳥なんて最高じゃないですか。あ〜、書いてたら食べたくなってきた〜。
さて、今日は『ヤキトリ』という作品を紹介します。
読んだきっかけ
この作品は『幼女戦記』の原作者カルロ・ゼンによるSF小説です。
幼女戦記のアニメ版は、凄くはまってしまい映画版も観に行ったほど。泥臭い戦争物なのに、ファンタジー要素と異世界転生要素が組み合わさったナイスなエンタテインメントです。
その原作者が書いたSFってんですからチェックしましたよ!
また、表紙のSo-Bin氏のイラストも無骨な感じがバシッと出てて良いですな〜!!
あらすじ
地球は異星人に支配された。
《商連》と呼ばれる異星人集団に、頭を下げて奴隷のような階級になってなんとか生き延びることができる地球人。
閉塞し辟易とした状況から抜け出そうとしているアキラのもとに、商連の兵隊スカウト人であるパプキンが現れる。パプキンを自らの地位を《調理師》と呼んだ。そして、アキラが配属されるのは商連の惑星軌道歩兵=通称《ヤキトリ》だった。
商連の定義する《ヤキトリ》は、以下の通り。
- 概要:商連海兵隊の安価な代用品
- 位置付け:備品
- 品質:意思疎通に問題なし
- メリット:極めて安価
- 運用上注意点 ①反乱・暴動を誘発しやすいため、お茶を飲ませることは許可する ②無重力空間では挙動が乱れるため、鎮静音楽としてモーツァルトを聴かせること。
《ヤキトリ》は、報酬面ではそこそこ。しかし、住環境や食事は劣悪。おまけに、ミッション参加時の生還率が30%以下という、ぶっちぎりの危険度。
つまり異星人達にとって、自分達の正規の海兵隊を使うよりも、安く済む使い捨て(再利用を前提としていない)の廉価版兵隊・・・
それが《ヤキトリ》だ。
アキラの他に同じ《ヤキトリ》K-321ユニット(部隊)に配属されたのは《タイロン 米国人》、《エルランド 北欧人》、《アマリヤ 英国人》、《ズーハン 中国人》。陽気なタイロン、真面目で融通がきかないエルランド、アキラにいつも突っかかってくる女アマリヤ、常に中庸にいて己の腹の中を見せない女、ズーハン。
貧しく過酷な状況で生きてきたアキラにとって、他人から食事を奢られたり、安易に同じユニットにいるだけの人間を『仲間』という耳障りの良い言葉で呼びたくはなかった。そうした反骨心を持つが故、人一倍努力したにも関わらず、抜きん出た人間の足を引っ張るような《クソ野郎》を心底嫌っている。
K-321部隊《ヤキトリ》は、新たなる運用のテストケース。演習は火星の《キッチン》にて行われる。体を動かす所から武器を扱う事。ユニットで連携した戦術のシミュレーション。演習プログラムをこなしていく必要がある中で、我が強いK-321部隊の面々は互いの足を引っ張り合う毎日。終わる事のない演習、栄養価だけ充実し味は最悪の食材《大満足》を食べなければならないストレス、教官からは挑発と侮辱的なセリフを吐かれる日々。
果たしてK-321部隊は演習に合格する事ができるのか。
アキラは己の人生を切り開く事ができるのか。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
大規模組織への反骨心、どんよりとした暗さはない。アキラが基本的に他人を信用しないので、K-321部隊の面々でバチバチしたやり取りがほとんど。
読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
基本的に句読点が多めで、シンプルかつ読み手にとって意味がわかりやすい文章。それでいて、単調にならない。
ワクワク度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
商連とかスケールでかい!
ハラハラ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
おいおい!一体どうなっちまうの?という展開の連続。劣悪な環境に押し込まれ、チームメイトと意見も合わずぐちゃぐちゃな結果ばかり叩き出す彼らの行動、常にハラハラ。
食欲増幅度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
マクドナルドハンバーガーがこんなに美味そうな描写は他に無い。
冒険度:3 ⭐️⭐️⭐️
冒険というより理不尽な状況に叩き込まれるからなぁ・・・。自らの意思が全く通用しない環境で、とにかく生き残って今の状況を脱却したい男の話。
胸キュン:1 ⭐️
男女混合チームだが、そんなシーン一切無い。
血湧き肉躍る:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
演習シーンがかなりの迫力。チームメイトとの口喧嘩、いざこざを含めて楽しめる。
希望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
劣悪な状況、理不尽すぎる中でも力強く進むアキラ他K-321の存在が希望。
絶望度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
地球人が異星人に支配されている物語の背景が、すでに絶望的な状況。特に《ヤキトリ》はそもそも人権がない備品扱いだから、明るい未来は見えないよなぁ・・・。
残酷度:2 ⭐️⭐️
本巻ではまだ実際の戦闘が描かれていないので、実際に人間やその他生物の肉体に損傷を与えるシーンはほとんどない。
恐怖度:4 ⭐️⭐️⭐️
恐怖感はない。強いて言うなら状況が恐怖というより過酷すぎる。
ためになる:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
『諦めは勇者をも殺す』という教訓。
泣ける:1 ⭐️
泣く要素が無い。
ハッピーエンド:2 ⭐️⭐️
まるでハッピーな匂いがしない終わり方だった。だが、本作でこの物語は終わらず、次巻を読みたくなる終わり方だった。
誰かに語りたい:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
登場人物や設定、固有名詞などがインパクトがあるので、話題には事欠かない。
なぞ度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
商連人の全体規模や、パプキンの野望など、まだ明かされていない事が多くある。
静謐度:1 ⭐️
静謐な雰囲気とは程遠い。
笑える度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
最悪な味の食品名が《大満足》という皮肉たっぷりの名前だったり、K-321の処遇に関する事、チームメンバーとの悪態・罵詈雑言、なだめすかし含めたやり取りの数々に笑うしかない。
切ない:2 ⭐️
切ない感じがどこにもしない。
エロス:1 ⭐️
そういうの、何もない。
データ
タイトル | ヤキトリ 1 一銭五厘の軌道降下 |
著者 | カルロ・ゼン |
発行元 | 早川書房 |
コード | ISBN978-4-15-031280-0 |
まとめ
いや〜、面白かった!
ズンズン読ませる設定と登場人物の立ち回り、会話が凄くてどんどんページをめくってしまいました。
まず、地球は国籍に関係なく全員が、宇宙人の連合組織《商連》に支配されている、という点からしてただならぬ事態。しかし、敵である《商連》は超効率主義。地球人を皆殺しになどせず、使い倒したい。
そこで、《ヤキトリ》のような、その星に生きる現生種によって構成される使い捨て部隊が出来上がるという状況設定も見事!
上記の設定は、SFではさほど斬新ではないかもしれませんが、アキラ、パプキンをはじめとする登場人物が物語の歯車を激烈に回転させます。
また、僕ポメラニ・アンパンが気に入った以下の要素も注目!
【皮肉たっぷりの固有名詞】
- 《大満足》:チューブに入った食事。完璧な栄養価と謳っているが、クソまずい。他のバリエーションはなく、《ヤキトリ》は例外なくこれを食べるしかない。
- 《調理師》:《ヤキトリ》を実戦で運用できるよう調整する役職の通称。
- 《ヤキトリ》:商連が制圧した星にいる現生人種から集めた使い捨て軌道降下部隊。
- 《キッチン》:《ヤキトリ》の訓練施設。
【その他面白いなぁと思う設定】
・移動用宇宙船には常に《モーツァルト》の曲が流れている。《ヤキトリ》の心身を安定させるためだが、四六時中流れていると・・・。なお、スピーカーを殴るとより音量が増す。
人間生きていると何かしら理不尽な体験に直面します。そうした時に、どう切り返して『引くことなく前進するか』というシーンはまるで自分の事のように読ませてしまう著者は流石だと思いました。
これはもう読書、というより『体験』です。読んだ人みんなK-321部隊に配属されるのです!
読み終わってすぐに次巻が読みたくなる!そんな作品でした。
気になったフレーズ・名言(抜粋)
涎が口の中で溢れるほどに蠱惑的な誘惑だ。毒を食らわば皿までという衝動に身を委ねてしまえればどれほど楽だっただろう。きっと、なけなしの自制心がなければ飛びついていた。
アキラ ヤキトリ1巻 p.45
正確無比な事実-くそ野郎どもというのは、結局、くそ野郎だ。マシだろうが、
アキラ ヤキトリ1巻 p.59
どうしようもない最底辺だろうが、屑=ゴミという本質は変えようがない。くずもゴミも燃やせ。
地球人ってのは、可能性に満ちていると証明したいんだ。なにしろ、今、我々は碌に思考能力がないと侮られてすらいる。とんだ話だとは思わないかい?
パプキン ヤキトリ1巻 p.355
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