どうも、こんにちは。ポメラニ・アンパンです。8月ですね。梅雨明けの今年の暑さもまた厳しく、いつも汗をかきながら、熱中症対策してなんとか踏ん張っています。
今年はこれに加えコロナによってさらに大変なので、忍耐力が問われますねぇ・・・。暑い日はどこかへパーっと繰り出して遊びたくなりますが、なかなかどうして遊びに行く先のお店やらが営業していないとあってはそれも叶わず。
しかし、僕をはじめ本好きな人は、浮いた時間は読書に充てるだけのことなのです。
今回ご紹介するのは、数々の賞を受賞しているSF大作、以前こちらでも紹介した『ハイペリオン』の続編にあたる『ハイペリオンの没落』です。
距離と時間を超えて巻き起こる戦いを、ダン・シモンズが圧倒的な筆力で描き切った作品です。
読んだきっかけ
ふと自分の読書記録を見返してみると、2年前の7月くらいに『ハイペリオン』を読んでいるんですよね〜。それを見て、そういえばこの続編の『ハイペリオンの没落』読んでないじゃん!と思い、読みたい欲求がふつふつと沸き起こって・・・という感じで本作を読みました。
*どうも僕は夏になるとSFを読む習性のようです(笑)。
『ハイペリオン』の読書感想はこちら↓
あらすじ
28世紀、地球が手狭になった人類は、幾多の星に新天地を見出していた。人々は様々な星を居住できる環境に開発をすすめ、200を超える星々でそれぞれの営みを紡ぐ人々。彼らは星と星を転移できる《ゲート》を作り、互いにいつでも行き来ができるようになっていた。
たとえ何百光年離れていようと一瞬で移動できる<転移ゲート>技術は、高度AI群<テクノコア>の自立思考よりもたらされた。人々はその超技術の成果を享受し、繁栄を極め、人生を謳歌していた。
<文庫本(上巻)背表紙より抜粋>
連邦の主星TC2(タウ・ケティ・センター)から色鮮やかな光条を描いて、FORCE無敵艦隊が出撃していく。めざすは謎の遺跡<時間の墓標>を擁する惑星ハイペリオン。宇宙の蛮族アウスターから人類連邦を守るための戦いの火蓋が、いままさに切って落とされようとしていた。
いっぽうハイペリオンでは、連邦の密命を受けた七人の男女が、ついに<時間の墓標>に到着していた。長い旅路のはてに、その地で彼らを待ち受けていたのは・・・・・・?
・人類&テクノコア VS 宇宙の蛮族アウスター
・ハイペリオンにある謎の遺跡<時間の墓標>を調査する巡礼者たち
ハイペリオンに向かった巡礼者すなわち、
フィドマン・カッサード、ルナール・ホイト、ブローン・レイミア、マーティン・サイリーナス、ソル・ワイントラウブ、そして領事。
一行は<時間の墓標>で何を見るか。各々の人生にケジメをつけられるか。
そして連邦を守る立場のCEOマイナ・グラッドストーンの孤独な戦い。
マイナ・グラッドストーンのお抱えの画家として優遇されたセヴァーンは、夢を見ると巡礼者達の思念とシンクロする。そこで見たものは。
前章から描かれる謎の核心と、対アウスターに立ち向かう人々を描いた壮大な群像劇の幕が切って落とされる!!
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
近未来、超高速通信、瞬間移動(転移)、ゲート、宇宙の蛮族、政治、軍隊、過去と未来、異形の化け物、神、病気、砂漠、謎の遺跡、地球、苦痛、愛・・・
前作で明かされなかった謎の解明、七人の巡礼者達のそれぞれの決着など、物語は前作の続きにしてクライマックスに向けて緊張感を高めてゆく。
読みやすさ:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
多くの複雑な要素を持ちつつも、読者を混乱させない著者の筆力と翻訳者に感謝したい。読むにつれて先が気になる展開で、読みにくさを感じさせない。
ワクワク度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
前作を読んでいると巡礼者には特別な思い入れがある。彼らの行く末に待ち受ける試練や、難局に抗う行動に、応援とワクワクとハラハラを感じずにはいられない。
ハラハラ度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
同上
食欲増幅度:3 ⭐️⭐️⭐️
作中では食料が非常に貴重なため、ちょっとした「水を飲む」、「携行食を食べる」というシーンが出てくるとホッとする。人間やはり食が大事!
胸キュン:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
それぞれの別れに涙する。
ページをめくる加速度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐⭐️⭐️
ベタな表現しかできないが、先が読めない展開、テンポの良い展開、数々の危機的状況、そして力強く難局に負けず立ち向かう巡礼者たち。否が応でも気になってどんどんページをめくってしまう。
希望度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
後半、大変なことが起こり、それまでの当たり前が崩壊する。しかし・・・、という展開に希望を見た。
絶望度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
絶望的な境遇を抱えた人物はいるが、物語全体としてみるとそこまで重い絶望は感じなかった。
残酷度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
早贄のように刺し貫かれ、それでも死なず苦痛にまみれる描写はなかなか残酷。
恐怖度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
人間をさも部品のように扱う存在は、SF作品ではわりとありがちだが、やはり背筋が寒くなる。
ためになる:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
科学の発展につれ、人がそれに頼りきり疑いさえしなくなった時、何が起こるのかを一つの可能性として本作は見せてくれたと思う。
泣ける:3 ⭐️⭐️⭐️
愛着はある登場人物の結末には胸にジーンとくるものがあります。
読後感:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
「ああ〜!みんな(登場人物のこと)お疲れ様〜!」という感じでしたね。とにかくこの物語は初めっから終わりまで難局ばかりで、片時も休まる瞬間が無かったように思い、ようやく長い戦いの終局ということで、ホッとしたと同時に、彼ら巡礼者たちの物語も終わるのかと思うと寂しくもあった。
誰かに語りたい:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
この作品は万人向けだと思う。これを読んだ人と感想を分かち合いたい。純粋に。
なぞ度:3 ⭐️⭐️⭐️
結局<時間の墓標>は誰がいつ創ったのかしら?僕が読み落としただけかな?
静謐度:1 ⭐️
とにかく怒涛の展開なので、静かなシーンは最後のエピローグくらいか。エピローグにしても、静謐さ、とは少し違う気がするし。
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐️
やはりブローンとマーティンのやりとりは良い。お互い憎まれ口を叩くが見ていて微笑ましくなる。最初はむちゃくちゃ険悪だった関係ほど、一旦歯車が噛み合うと強いのだろう。
切ない:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
エロス:1 ⭐️
前作ではかなりあったのだが、今作ではほとんどなかった。
データ
原作タイトル | THE FALL OF HYPERION |
日本語タイトル | ハイペリオンの没落 |
著者 | ダン・シモンズ (Dan Simmons) |
訳者 | 酒井昭伸 |
発行元 | 早川書房 |
コード | (上巻)ISBN4-15-011348-3 (下巻)ISBN4-15-011349-1 |
まとめ
読み終わりましたあああ〜!!大波乱な展開の末にたどり着いた素晴らしい読後感でした。
広大な宇宙を舞台に繰り広げられる陰謀と戦い、真の黒幕の存在、通常とは異なる時間は流れる遺跡、巡礼者達に苦痛を与える<存在>・・・、いかにもSF的なガジェットをふんだんに使っているのですが、それが陳腐にならず物語に必要な要素として描かれているのが著者の力量のなせる技なのか。
とにかく夢中で読んでしまいました。
本作が楽しめた理由は、言うまでもなく著者ダン・シモンズの筆力の賜物です。これに加えて翻訳も本当に素晴らしかった。とにかく読みやすく、言葉選びのセンスも作品にマッチしていると思いました。
あと、やはり登場人物が皆物凄く魅力的です。
僕の1番のお気に入りはやはり偏屈な詩人、マーティン・サイリーナス。皮肉屋ですが大極を見る視点を持っていて、とぼけたかと思えば揚々と詩を吟じる。この、アクの強すぎる性格のせいか、冒険当初は他の巡礼者たちと喧嘩になることが一度や二度ではありません。特に、ブローン・レイミアとは犬猿の仲でした。そんな二人が、今作では・・・。この二人に関係性も良いですね!
あとは、実在の人物=ジョン・キーツをなぞらえたセヴァーンの存在も本作を語る上では欠かせません。しかし詳細はネタバレになりますので、ぜひご一読を!
本作がどのくらい魅力的な作品かは、下巻の巻末で評論家の大森望さんもおっしゃっています。「ハリウッド製SF大作群をあらゆる面で凌駕する。ここには新旧《スター・ウォーズ》はもちろん、《ブレードランナー》も《ターミネーター》も《スターシップ・トゥルーパーズ》も《マトリックス》も含まれる。」と。
うん!僕も同意ですね!特に映画化は期待しませんが、読んでいた時に文章からイメージできる情景は、まさに映画のような臨場感を与えてくれました。これぞ極上のエンタテインメント小説だと思いました!
気になったフレーズ・名言(抜粋)
全き混沌の具現化、混乱のみごとなまでの定義、哀しみの声が演ずる振りつけなきダンス。それが戦争だった。
領事 ハイペリオンの没落(上巻)p.110
この苦痛は生まれたときから自分とともにあったものだ、とサイリーナスは気がついた。これは詩人への、宇宙からの贈り物なのだ。自分が感じとり、詩に移しこもう、散文に封じこめようと、長く無為な一生を費やしたあげく、結局徒労におわったものの正体は、苦痛の物理的投影にほかならない。いや、苦痛よりももっと悪いものー不幸。なぜなら宇宙は、万物に苦痛を与えているからだ。
ハイペリオンの没落(下巻)P.31
この世に古い本のにおいほどすばらしいものはない。
ハイペリオンの没落(下巻) p.56
人間が銀河系に広まるさまは、癌細胞が生体にはびこるさまとまったくおなじではありませんか。人類はみずからの膨張と繁栄しか眼中になく、滅びゆき虐げられる無数の生物種など一顧だにせず、ひたすら殖えつづけた。そして競合する知的生物を、つぎつぎに滅ぼした。
セック・ハルディーン
ハイペリオンの没落 (下巻) p263.
ときとして…機械とわれわれを隔てるものは、夢だけかもしれんぞ。
モルプルゴ大将
ハイペリオンの没落 (下巻) p.474
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