こんにちは。ポメラニ・アンパンです。
しばらくこちらの更新を停滞していました。その間、本はいろいろ読んでいたのですが、更新をサボってまして・・・。(∀`*ゞ)テヘッ
まあ、人間浮き沈みがあってなんぼだと思ってますので、ご容赦を。
さて、いろいろあって、こちら更新を再開しようと思いますが、記事の内容を簡略化します。いままで、要素ごとに点をつけてましたがシンドイので辞めます。
あらすじと作品情報と感想だけ。といっても、僕は文章もうまくないし、ありきたりで主観的な感想しか書けないと思います。僕が面白いと書いたからといって万人が面白いわけではないと思いますので、そこんとこ踏まえてよろしくです。
さて、久々の読書感想はハヤカワSFコンテスト出身の新鋭作家、春暮康一さんの『法治の獣』です。
あらすじ
<文庫本冒頭より抜粋>
惑星<裁剣>には、あたかも罪と罰の概念を理解しているかのようにふるまう雄鹿に似た動物シエジーが生息する。近傍のスペースコロニー<ソードⅡ>は、人びとがシエジーの持つ自然法を手本とした法体系で暮らす社会実験場だった。この地でシエジーの研究をするアリスは、コロニーとシエジーをめぐる衝撃の事実を知り・・・
戦慄の表題作に、ファーストコンタクトの光と影を描ききる傑作2篇を加えた、地球外生命SF中篇集。
作品情報
タイトル | 法治の獣 |
著者 | 春暮康一 |
発行元 | 早川書房 |
コード | ISBN978-4-15-031520-7 |
感想
初めての著者作品。手に取ったきっかけは、ジャケ買い。タイトルと表紙絵、巻末のあらすじをみて、なんか面白そうだと思って買って積んでいました。
本作は以下3篇が収録されています。
①主観者
②法治の獣
③方舟は荒野をわたる
まずは主観者。地球人が太陽系外で知的生命を探すようになった時代の悲劇的なファーストコンタクトを描いています。
とある赤色矮星にて、主人公たち5人は、クラゲとイソギンチャクのあいのこのような不思議な発光生命と遭遇する。光で何を行っているのか。意思疎通が可能なのか。調査をし、とある実験を試みた結果・・・。予想だにしなかった結末へ。
SFでいうところのファーストコンタクト。これは、宇宙人や未知との遭遇を意味するワードとして定着していますが、僕が今まで読んだファーストコンタクトの中で「これ、どうすればよかったんだ・・・・??」と読了後思わずつぶやいてしまいました。なんかもう・・・。辛!
続いて法治の獣。これは、発想が凄い!シエジーという生き物の行動をベースに法律を決め、それを人間の生活でも適用できるか実験をするスペースコロニー<ソードⅡ>の住人達。なまじ人間のような忖度や差別を持ち込まない動物の行動を法体系化したほうが皆が幸せになれるのではないか?という理由でシエジーを立法の根拠にしている。
一見平和そうに始まって、とあることがきっかけで雪崩のように崩壊していくスペースコロニーの日常。ここらへん、かなりハラハラものの、サスペンス要素あり。生物学、天体の話に絡んでオカルト、原理主義、政治的な陰謀だったりと読んでて止まらなくなってしまう要素がてんこ盛りです!
最後の方舟は荒野をわたるは、これまためちゃくちゃ斬新な設定来ました!さあ、みんなで生態系と会話しよう!という感じで、相手は6万立方メートルのゼリー状のなにか。移動します。太陽目指して少しずつ移動します。このゼリー状のなにか、の中には生き物がいっぱいいて生態系として成立しています。太陽に向かって移動するということは、動物としての本能なのか、はたまた知性を伴った行動なのか。そこからスタートし、少しずつ接触し研究して最後は・・・。
3篇、いずれも地球人と地球外生命体とのコンタクトをメインテーマとして描かれています。2023年の現在、宇宙にはまだ気軽に行ける時代ではありませんが、あと50年?100年?わかりませんが、宇宙の星々の間を人びとがガンガン行ける時代になったとき、地球人とはまったく異なる概念をもつ生命に接触した際の心構えとして本書は良いと思います。
なぜなら、地球人が地球人的に物事を思考したところで、相手の異種生命体は、そもそも自己認識の概念自体が異なる場合もあったり。翻って「こっちがこうだから、大丈夫だろう」みたいな対話は通用しないってことですね。本書のファーストコンタクト作品3篇を通じて、コミュニケーションの基本的なことも改めて考えさせられました。
気になったフレーズ・名言(抜粋)
「ええと、これは金属酸化物の還元。こっちは巨大な有機化合物。それから、段階的にエネルギーを引き出された無数の中間体・・・」
イリヤ
法治の獣 P.21
だが、わたしたちが些細なことと考えた、その欠如こそが悲劇のはじまりだった。
法治の獣 P.82
彼らは生まれながらの功利主義者なの。人間のどんな論理や正義感よりも実用的な答えを見つけ出す。その法の効力なら、自然淘汰の原理が何より強力に保証してくれる。究極の自然法と呼ばれる所以ね。
アリス
法治の獣 P.82
結局のところわたしたちは、何かをしてやりたいと願っても、混乱と厄介事を振りかけることしかできない。それなのにひょっとしたらわたしたちの大使は、天の恵みを彼らに授けるような顔で降臨してはいないか。
あるいは、好奇心の代償に法外な要求を告げられることで、はじめてわたしは心安らかになるのかもしれない。人間がこの宇宙で奪うばかりでないと証明し、フェアに生きるための、その対価を全霊をもって払い続けることで。
マリウス
法治の獣 P.323
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