こんにちは。ポメラニ・アンパンです。
5月も半ばに入りまして、気温も暖かいからちょっと暑いに変わってきてますね。ああ、いよいよあいつが近づいてきているんだなぁと思うと滅入るばかりです。
そう、あいつとは夏!貴様のことだ!僕は汗っかきなので夏ほど過ごしにくい季節はありません。苦手どころではありません。嫌いです。ヘイトです!ああああああああ!
と僕のような宇宙の中の塵に等しい存在が何かできるわけでもないので、なんとか気を取り直して生きています。
ということで、今日ご紹介するのは少しでも夏の暑苦しさを紛らわせそうなSF小説で、アン・マキャフリーさんの『歌う船』です。
<あらすじ 裏表紙より抜粋>
この世に生まれ出た彼女の頭脳は申し分ないものだった。ところが身体の方は機械の助けなしには生きていけない状態だった。そこで<中央諸世界>は彼女を金属の殻の中に封じ込め、宇宙船の身体をあたえた。優秀なサイボーグ船の誕生・・・・・・それでも、嘆き、喜び、愛し、歌う、彼女はやっぱり女の子なのだ。乙女の心とチタニウムの身体を持つ宇宙船の活躍を描く、傑作オムニバス長編。
作品情報
原作タイトル | THE SHIP WHO SANG |
日本語タイトル | 歌う船 |
著者 | アン・マキャフリー(Anne McCaffrey) |
訳者 | 酒匂真理子 |
発行 | 東京創元社 |
コード | ISBN978-4-488-68301-6 |
本作に含まれる要素
身体欠損、改造手術、大宇宙航海、パートナーシップ、任務、仕事、人間、サイボーグ船、異星人、演劇、出会い別れ、愛、嫉妬、口喧嘩、借金、条件付け、歌。
感想
書店でこの本を見かけ、タイトルと表紙絵、あらすじを見てまた僕の「読みたいセンサー」が鳴り、購入。本作の著者のアン・マキャフリーさんの作品は初めて。初めての著者作品を読むのはちょっとドキドキするんですよね。面白いかどうかももちろんですが、自分に合うか。ここが読書をするうえでわりとキモになるのではないかと思います。
さて、本作は今まで触れてきたSFとはちょっとテイストが異なる、新鮮なものでした。
まず、主役は船に改造された少女ヘルヴァです。彼女は人間の両親から生まれたれっきとした人間ですが、生命維持装置がなければ死んでしまう状態で生まれてしまった。安楽死させるか、彼女の脳だけでも<中央諸世界>に貢献させるか。両親は決断の末、後者を選び、ヘルヴァは人間としての身体は失ったが、新たに鋼鉄の身体を手に入れた。そう、彼女は人間の精神はそのままに船となったのだ。
この世界では彼女のように殻に入って活躍する人を殻人<シェル・ピープル>と呼んだ。彼女と同様、殻で育成された仲間は数多くおり、船になった者は頭脳船<ブレイン・シップ>として中央諸世界の業務を行うべく活躍する。
一般的に頭脳船は人間のパートナーを一人乗船させる。彼らは筋肉<ブローン>と呼ばれ、容姿端麗かつ厳しい訓練を通過した者のみがなれる職種だ。運航・船内状態管理など文字通り船の脳をつかさどる頭脳船<ブレイン>と任務を補助し支える筋肉の生き物すなわち人間<ブローン>の相性が良ければそれだけ効率的に任務を遂行できる。
本作は頭脳船ヘルヴァを主人公とし様々な出会い、別れ、喜怒哀楽、喧嘩、戦いを描く壮大なSF作品。ひとつ重要なのが、ヘルヴァしかり他の殻人しかり、だれしもサイボーグ化すること、サイボーグになったことを悲観していない。それどころか、とてもポジティヴに描かれている。
何より読んでいて楽しかったのは、ヘルヴァと人間との会話。ヘルヴァは船である前に精神は人間のそれと変わらない。気に入らなければ怒るし悪態もつく。
なんかもういろいろとヘルヴァ、すごく可愛いいんですよ!
本書巻末の解説にもあるように、SFを苦手だと感じている人にこそおススメできる一品です。
気になったフレーズ・名言(抜粋)
あなたにとってはそうかもしれないけど、あたしにはちがうわ。とどのつまり、あたしはよろいをつけたおとめなのよ
ヘルヴァ
歌う船p.112
あたしは自分が必要とされる場所にいたいの、ダヴォ。それに、だれにもときには、なにかをしないことで役に立たなければいけない場合があると思うの
ヘルヴァ
歌う船 p.243
ともに勝利を祝う相手が、すばらしい偉業をたがいにほめたたえる相手が必要だった。さもなければ、どのような大成功もむなしかった。前進するための刺激がなければ、先へ行ってもむだだった。人には目標が必要なのだ。さもなければ、なにをしても無意味だった。
歌う船 p.299
一日は終わり
太陽は沈んだ、
海から、陸から、空から。
万事順調。
安らかに眠れ。
神はかたわらにあり!
歌う船 p.370
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