こんにちは。ポメラニ・アンパンです。今は5月ってことで、少しずつ夏が近づいてきてますね!今日は特に日中最高気温が26度を超えまして、暑かった〜!!!
そんなわけで、いかがお過ごしでしょうか?ゴールデンウィークは残すところわずかとなりましたが、楽しんでますか?僕はどこへ行くこともなくゲームしたり、本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、銭湯に行ったりでのんびりしています。
そんなこんなで、今回紹介する本はグレッグ・イーガンの『宇宙消失』です。
読んだきっかけ
僕、とある習い事をしているのですが、そこの事務員さんと会話をしているうちにSFの話で盛り上がりまして、なんとその人からお借りしたのが本作。グレッグ・イーガンって10年以上前に読みかけてギブアップした作家なので、ちょっと尻込みしましたがせっかくお貸しいただいたので読みました!
あらすじ
<文庫本冒頭より抜粋>
2034年、地球の夜空から星々が消えた。冥王星軌道の倍の大きさをもつ、完璧な暗黒の球体が、一瞬にして太陽系を包みこんだのだ。世界各地をパニックが襲った。球体は<バブル>と呼ばれ、その正体について様々な憶測が乱れ飛んだが、ひとつとして確実なものはない。やがて人々は日常生活をとりもどし、宇宙を失ったまま33年が過ぎた・・・。
ある日、元警察官のニックは、匿名の依頼人からの仕事で、警戒厳重な病院から誘拐された若い女性の探索に乗りだした。だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実に結びつこうとは・・・!新鋭作家が描きだすナノテクと量子論がもたらす戦慄の未来。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
近未来、脳の再結線、ナノテクノロジー、量子力学、カルト集団、人探し、事件捜査、アイデンティティ、シュレディンガーの猫、情報操作・・・。
SFっぽさを象徴する語句や仕掛けがこれでもかと投入されているので、SFに慣れ親しんでいない読者は困惑する可能性大。しかし、これらの語句やギミックが主人公のニックが生きる舞台をこの上なく的確に演出しているのだ。もし、序盤10ページを読んで読んでみて、「どうにも読みづらい」と感じたならP.387の『訳者あとがき』から読んでみるのをおすすめ。
読みやすさ:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
読みやすいかどうかと問われると、「読みやすいよ!」とは言い難い。しかし、先にも述べたように本作独自の語句やギミックの意味がわかると俄然物語が頭に入りやすくなるし、世界観の理解も深まる。ちょっと詰まりそうなら『訳者あとがき』の解説を読んでから本編を読むといいだろう。
ワクワク度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ストーリーのテンポは早い。とあることがきっかけで、主人公はある組織に潜入するのだが、敵も味方も定かではないところでの展開がワクワクする。
ハラハラ度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
本作の最大にして最も頻繁に登場するギミック(テクノロジー)の脳の再結線=モッド。いわゆる僕らでいうところのコンピューターの『ソフトウェア(アプリ)』に相当するものを、人体に直接ぶちこむテクノロジー。本作の世界では人々が当たり前のようにこれらを使って日々の仕事や用事をこなしている。主人公ニックもゲームの特殊能力のように、状況に応じて適切なモッドを使いこなす。。そこに、他の作品では味わえないスリルと面白さがある。
食欲増幅度:1 ⭐️
食事シーンはあまり印象に残っていない。
冒険度:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ストーリーはニックが孤独に任務をこなすために動く、というもの。冒険的な要素はあるものの、いわゆるアドベンチャーというより、ミッションに近い。
胸キュン:3 ⭐️⭐️⭐︎
今は亡き妻との関係に少しある。
血湧き肉躍る:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
物理的な戦闘的行為あり。モッドによる肉体強化等の能力を駆使して戦うシーンは手に汗を握る緊迫感。加えてモッドによる頭脳戦的な要素もあるので、能力バトル好きな人にも響くと思う。
希望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
ニックの亡くなった妻が時々出てきてはアドバイスしてくれる(これもモッドの一つと思われる)ので、ニックを通して2068年を体験する僕らも孤独じゃない。
絶望度:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎
モッドはすごく便利な代物だけど、僕らが知るコンピュータのソフトと同様、ハッキングされようものなら大変なことになる。
残酷度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
量子論が本作の重要なテーマなのだが、僕はそちらの方面の知識は今一つのため、ちと理解が追いつかない。つまり、選択されなかった他の可能性は「無かったこと」になるのか?
恐怖度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎⭐︎
冒頭の『星々が消えた』のくだりが一番怖かったかも。
ためになる:3 ⭐️⭐️⭐️
量子論、シュレディンガーの猫、といった実際の量子論に触れることはできる。ためになるかどうかはあなた次第。
泣ける:1 ⭐️
泣かないと思う。
ハッピーエンド:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
表面的には平和に終わる。
誰かに語りたい:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
語りたいというより、読んだ人と『答え合わせをしたい』かな。量子論とモッドの理解度が本作を楽しめるかどうかを大きく左右すると思うので、特に量子論に詳しい人を交えて議論すると面白そう。
なぞ度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
一回の読書では本作の全てを理解できなかった。結局、あの<バブル>は誰が作ったのか?だが、宇宙を観測した人類によって作られた、で合ってるのか?
静謐度:1 ⭐️
本作は基本的にニックの視点で描かれているのだが、ニックもモッドを使いながら頭の中であれこれあれこれ考えるので、静謐さはほとんど感じなかった。
笑える度:1 ⭐️
笑えるシーンは無かったなぁ。
切ない:3 ⭐️⭐️⭐️
モッドの仕様について是非を議論するシーン。亡き妻とのことで、少し切なさを感じた。
エロス:1 ⭐️
モッドを利用すればすごくエロいこともできそう、と思った僕。
データ
原作タイトル | QUARANTINE |
日本語タイトル | 宇宙消失 |
著者 | グレッグ・イーガン (Greg Egan) |
訳者 | 山岸真 |
発行元 | 東京創元社 |
コード | ISBN4-488-71101-4 |
まとめ
グレッグ・イーガン。う〜ん、やっぱりちょっと苦手かも。本作は、人から借りた本という手前、最後まで読みましたが、なかなか厳しくて、読書中何度か「脳が痛ぇーー!!!」て叫びました!
とはいえ、本作の『モッド』なるギミック、すごく面白かったですね!あらかじめインストールしておくと使用場所を選ばず使える性格改変ソフトウェア。中には肉体を強化するモッドもある。
例えば、《夜警モッド》を使うと夜警を行うための心の集中力を強化できる、といった具合に。ニックはこの他たくさんのモッドを使って依頼を果たそうと奮闘するわけですが、敵側組織に《忠誠モッド》を仕込まれて、さあ大変。どうすんの〜!?という感じでストーリーが進みます。
また、世界観も特殊で突然謎の物体<バブル>が出現したことにより、この世界では星が見えないんですね。初めのうち人々はパニクるんだけど、日常生活に支障がないことがわかり、慣れていって33年経ちました、というところから本編が始まる。この現象、最終的にニックの事件とつながるんだけど、僕の拙い頭ではいまいちよーわからんw
もう一回読んだらわかるかもしれない。
とにかく、苦手だったイーガンを最後まで読めたので、今回はこれでOK!
ガチでハードなSFを体験するならやはりイーガンなのかな、と思った次第でした。
気になったフレーズ・名言(抜粋)
金銭的な問題は絶対に頭の中で処理しないのがポリシーだ。キーをいくつか叩いて、口座に満足のいく額の頭金が一時的に貸しつけられているのを確認する。
宇宙消失 P.11
心の病は、千年王国説信奉者の専売特許ではない。信仰心のない者にも、<バブル症>が待っていた。それは、地球の八兆倍の空間に”閉じ込められた”と考えることで引き起こされる、ヒステリー的で、体の自由を奪われる”閉所恐怖症”的反応だ。
宇宙消失 P.34
ゾンビ警官は、自分には何もできないとわかっていたから、背を向けて、そこから歩み去ったのだ。そして。死者には何もしてやれないとわかっていたから、生き残った自分になにが必要かを考えはじめたのである。
宇宙消失 P.84
自分がなぜしあわせかを分析しているうちにうんざりしてくるのは、人間としてごく自然な反応ではないか。
宇宙消失 p.124
たいていの人間は、いろいろなできごとに翻弄されながら生きていて、制御のおよばない力に人生を決められているだけなのさ。
ニック
宇宙消失 p.147
簡単に受け入れられる話ではないけれど、わたしたち人類はそういう生き物よ。人類は”自分と世界について知っている”存在というだけではない。まさにその知識を得るプロセスで、自分と世界の大半を滅ぼしている存在なの。
ポークウイ
宇宙消失 p.177
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