こんにちは。ポメラニ・アンパンです。ようやく涼しくなってきましたね。とはいえ、天気が不安定な日々が続くのでそれもちと鬱陶しいと感じる今日この頃。
季節の変わり目という事もあり、体調も崩しやすくなるので、そこは油断せずたくさんご飯を食べています(笑)!この歳になって感じるんですが、人間一にも二にも、健康が大事!健康維持には食う、寝る、は欠かせません!
睡眠不足気味の僕ですが、食うことは疎かにしませんよ(爆)!
てなわけで、今日も積読の中から読んだ一冊を紹介します。
本サイト初登場!ドストエフスキーです!作品は『白夜 / おかしな人間の夢』という短編集でございます!
この本を読んだきっかけ
実は今までドストエフスキーの作品を読んだことがなく、たまたま中古本で著者の作品が安く売られていたので買った次第です。
あらすじ(概要)
本作はドストエフスキーの小作品を集めた短編集。一般的に、ドストエフスキーの作風は、暗く重いとされているが、本作に収録された作品群はドストエフスキーらしくないとのこと。
以下、各作品のあらすじを簡単にまとめています。
01)白夜
ペテルブルグに住む少年である『僕』。想像力豊かで塞ぎ込んだであれこれ考えたり建物と会話したりする夢想家の主人公。夢想家で極度に内気な主人公が、とある女性に出会うことで心惹かれてゆく。
その女性ナースチェンカとの会話が少年にとって日々の生活の中で唯一輝かしいものになっていくが・・・。
少年とナースチェンカの心の動きを小気味良い会話を通して描く作品。少年のナースチェンカに対する一途さが清々しい。
02)キリストの樅ノ木祭りに召された少年
5、6歳くらいの男の子。飢えと寒さでその命が尽きかけようとしていた。痛かった指、寒かった体が突如気持ち良くなる。そして彼が見たのは、クリスマスツリーと、その周りを飛ぶ少年と同い年くらいの少年少女たちだった。
03)百姓のマレイ
ドストエフスキーが29歳の時、監獄で見た男。この男を見ながら物思いに耽るうちに、ドストエフスキーがさらに幼い9歳の時、彼の領地で働いていたある百姓を思い出した。
突如、「狼が来るぞ!」という声が幼いドストエフスキーの耳に入り、彼は恐怖する。そこへ、百姓のマレイが現れ、宥める。「狼なんざいるはずねえさ。安心しな。キリスト様がついていなさるから」と。マレイはまるで母性的な優しさでドストエフスキーを安心させ、落ち着かせる。
この、マレイの記憶はドストエフスキーにとって特別な何かだった。この時の二人の関係は、ただの大人が子供を宥めることを超えていた。その後、ドストエフスキーはマレイと会話を交わさなかったが、この瞬間だけは神のみぞ知る、特別な瞬間だった。
そして、その思い出の後、ドストエフスキーは監獄で酒に酔って暴れてリンチされていた男ですら、全く違う目線で見ることが出来たという。
04)おかしな人間の夢
世の中の何もかもがどうでもよく感じられ、ついに男は自殺する事を心に決める。そして、決行しようとした夜、一人の少女との出会いによって、自殺は断念された。男は、家に帰り夢を見た。
その夢は、男が土の中で死体となっているところから始まるが、何者かわからない同伴者が現れて宇宙を飛ぶ。そして男が生まれ育った地球そっくりの大地に到着する。そこには、汚れも嫉妬もそういった醜い感情が一切ない、原罪に染まっていない人々の住む地だった。
男はその楽園に住まう人々に歓迎され、男もまた彼らを愛した。清く、地上では見たことのないほどの原罪に汚れていない人々。男はかつての地上での経験を語るも、話を聞いてはくれるが楽園の人々にとって男の話は理解できないようだった。そんな楽園での生活で、男は・・・彼らを、男にはその気がなかったにせよ、彼ら全員を堕落させてしまうのだ。
そんな夢から覚めた男の頭の中に、すでに自殺願望は消え失せ、代わりに夢で見た「真理」を伝道すると心に決めた。男に迷いは無かった。
05)一八六四年のメモ
ドストエフスキーによる、キリスト教、命、神について彼の思想が綴られている。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
夢想家、内向的、女性との対話、恋愛、悲恋、手紙、三角関係、貧困、餓死、ペテルブルグ、百姓、自殺、人間関係、宇宙、別の世界、清き人々、堕落、原罪、伝道、真理・・・。
共通したテーマは「人の生きづらさ」があるように感じた。しかし、ドストエフスキー自身は人間関係の構築に難しさを感じながらも、人の中にある優しさ、美しさを見失わず、汚水の中で光り輝く石がある、ような描き方で人間を描いているように感じた。
読みやすさ:7 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
箇所によってはページ左側に注釈を掲載してあり、より良く物語が頭に入りやすいよう配慮されている。文章自体もとっつきやすく、外国文学に慣れていなくても苦労なく読めるだろう。
ワクワク度:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
いわゆる冒険者やミステリーほど高揚感、ワクワク感を得られるものではないが、物語は派手さはないものの先が気になるので読み進めてしまう。
ハラハラ度:3 ⭐︎⭐︎⭐︎
ハラハラ、ヤキモキ、含めてこの数字。
食欲増幅度:1 ⭐️
食べ物どころかむしろ餓死しそうな男の子が不憫だった・・・。
胸キュン:5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
『白夜』における主人公とナースチェンカのやりとりは、ヤキモキさせられつつ二人の会話がなかなかテンポ良いので読み進める。で、主人公の胸の内を描写しているシーンでは主人公の嬉しさがストレートに出ているので「若いな。そういえば僕もこんな恋を抱いたことがあったなぁ」と遠い目で遥か昔を思い出してしまった。
ページをめくる加速度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
どんどん進む、という感じではないがしっとりと心を落ち着かせて読み進める感じ。
希望度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
なんだかんだ、どの話も後味はそれほど悪くなく、希望、と言えるかわからないが「まあ、よかったんじゃないか」と思える終わり方の話が多い。
絶望度:3 ⭐️⭐️⭐️
状況だけ見るとかなり酷いシーンもあるが、結末がそれほど酷くないので絶望感は少ない。
残酷度:2 ⭐︎⭐︎
『百姓のマレイ』で、酔った男がリンチされているシーンくらいか。
恐怖度:3 ⭐︎⭐︎⭐︎
原罪に染まっていない、「まっさら」な人々ってそら恐ろしいなと思ってしまった。
ためになる:4 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
外国の著者の作品を読むと、その国の背景や空気感を少しでも感じられる点が「ためになる」と言えるか分からないが、何かの糧になる気がする。
泣ける:1 ⭐️
泣ける箇所は無かったかなぁ。
読後感:4 ⭐️⭐️⭐️⭐️
面白くないわけではないんだが、ちと地味な印象が拭えない。
誰かに語りたい:2 ⭐️⭐️
ドストエフスキー作品「らしくない」短編集なので、興味ある人はどうぞ。
なぞ度:1 ⭐️
特になし
静謐度:1 ⭐︎
主人公の独白が多く、孤独な人物ではあるが、静謐さはあまり感じなかった。
笑える度:1 ⭐️
笑える作風ではない。
切ない:5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
白夜は主人公が一途なぶん結末は切ない。
エロス:1 ⭐︎
エロ描写は無し。
データ
タイトル | 白夜 / おかしな人間の夢 |
著者 | ドストエフスキー (Фёдор Миха́йлович Достое́вский) |
訳者 | 安岡治子 |
発行元 | 光文社 古典新訳文庫 |
コード | ISBN978-4-334-75308-5 |
まとめ
初のドストエフスキーでした!特にドストエフスキーに興味があったわけではないのですが、本書の背表紙解説文を読んで手に取り、なんの期待もせず読みました。
最初の『白夜』は、内気な主人公が偶然出会ったナースチェンカに思いを寄せ、お互いに距離が近づく過程をテンポの良い会話で描いています。結構、この会話が面白くてスラスラ読めました。オチはなんとなく読めていましたが、この主人公の清々しさが良かったですね。僕だったら彼と同じ対応ができる気がしません(笑)!
他の作品で印象に残ったのは『おかしな人間の夢』ですね。自殺したいと思っていた男が、とある夢を見て、その夢から覚めたら一転。伝道師になると言うんですから。この作品、サブタイトルに『幻想的な物語』と付いており、その名の通り男は夢の中で宇宙を旅して別の地球(男が住んでいた地球そっくりだが住んでいる人の質が違う)にたどり着くのです。ドストエフスキー作品で、宇宙を跳躍するシーンが出ると思っていなかったので、これはSF好きの僕にとって「おお!」ってなるポイントでした!
てな感じで、初ドストエフスキーでしたが、作風的にはわりと自分に合ってる感じがしたので他の作品も折を見て手を出したいと思います。
気に入ったフレーズ・名言(抜粋)
あなたは、ひょっとすると、彼は何を夢想しているのか、と訊ねるかもしれません。そんなことを訊ねて何になりましょう!夢想するのはありとあらゆることなんですから……。
白夜/おかしな人間な夢
p.52
そう、僕らは不幸のときには、他人の不幸に敏感になるものだ。感覚が打ち砕かれて分散するのではなく、むしろ集中するのだ……。
白夜/おかしな人間の夢
p.92
私の全身に取り憑いたある確信ーこの世の何もかもは、どうでもいいことばかりだ、と確信するに至ったということに他ならない。
白夜/おかしな人間の夢
p.164
僕は、愛するために苦悩を欲する。僕は今この瞬間に涙をくれながら、僕を見捨ててきたあの地球だけにキスをしたいと渇望する。その他のどこでの生も望まないし、受け入れたくはない!
白夜/おかしな人間の夢
p.186
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