こんにちは。ポメラニ・アンパンです。ようやく残暑もなくなり、涼しく過ごしやすい季節になりましたね〜。汗かきの僕も、この一週間はそこまで汗を描かなくなりました。この季節、もう少し長く続いてくれると良いのですが、少しずつ寒くなってくるんですかね。いずれにしろ季節の変わり目なので体調管理に気をつけるべしですぜ。
さて、今日はちょっと今までの僕とは違うテイストの本を紹介します。小説なんですが、なんと宝塚歌劇団にまつわる物語です。その名も『ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚』。著者は元タカラジェンヌ真山葉瑠さんの旦那さんの宮津大蔵さんです。
この本を読んだきっかけ
僕の妻がなかなか本を読めない人。でも彼女はものすごく宝塚歌劇が好き。ふと本屋さんで、この『ヅカメン』が目に入りまして、パラパラっと見て「これならあいつでも読めるかも」と思って買いました。買って、まず僕が軽く読んでみると、途中から止まらなくなり、結果妻より先に読了していたのでした!
あらすじ(概要)
本作は、宝塚歌劇団を支える男達の物語。宝塚歌劇団は言わずとしてら女性だけで役を担う劇団ではあるが、その華やかな舞台を支えるのは泥臭く職人気質の技術者、役者の家族だったりするのである。本作は、宝塚歌劇団の魅力を、別の視点から知ることのできる物語である。
<本書背表紙より抜粋>
「女なのに男の格好をして・・・・・・一体どこがいいんやろ?」鉄道院一筋だった多々良源蔵は定年直前、それまで全く関心のなかった宝塚歌劇団の<生徒監>に任命された。突如、娘たちの「お父ちゃん」となったことに戸惑いつつも、真摯に向き合ううち、その眼差しに変化が。
大道具、プロデューサー、演出、父兄・・・・・・タカラヅカを支える男たち=ヅカメンが織りなす、七つの奮闘物語。
01)月の番人
阪急電鉄の駅長、多々良源蔵が本社常務室に呼び出され、宝塚歌劇団の<生徒監>を任命された。定年を間際にしての采配に戸惑う多々良。これまで鉄道一筋に生きてきた自分、とても若い女性達の世話係が務まらないと思っていたが、常務の説得と妻の激励により渋々職を引き受ける。
配属されたのは月組の生徒監=「お父ちゃん」としての日々。生徒たちの顔を覚え、ツアーの調整をしていくうちに、多々良も少しずつこの仕事に愛着を感じ出す。
02)咲くや此の花
脱サラして妻の実家の商売を引き継いだ男が本章の主人公。3歳の娘、万里子の吃音が発覚し、なんとか医者に見せたりして改善を試みるも思うような結果が得られなかった。しかし、万里子が小学校三年生の時、家族で観に行った宝塚歌劇の『風と共に去りぬ』が万里子を変えた。その日から、万里子はタカラジェンヌになることを己の目標としそのための努力を惜しまない人間となった。万里子は自分でタカラジェンヌになるための方法を調べ、しかるべくレッスンを受ける。そんな万里子の姿は家族の態度も変える。宝塚へ入団するには宝塚音楽学校に入学しなければならない。試験を受けることのできるチャンスは生涯で四回。東の東大、西の宝塚と言われるほどの難を極める宝塚。万里子と家族の挑戦を描いた白熱と涙、家族の絆の物語。
03)ハッピーホワイトウエディング
本章の主人公、石川裕一。妹の美雪が宝塚音楽学校を卒業し、タカラジェンヌとなる。妹に料理を振る舞いに行った先で宝塚歌劇団のしきたりや厳しさを垣間見る。当の裕一も劇団に所属する役者志望の若者だったが、祐一の所属する劇団は宝塚とは比べものにならない。宝塚を知れば知るほど、自分の劇団の矮小さを感じ、劇団を辞める。教育実習で子供達に歌を歌ったりすることが得意な裕一は、そこに己の価値を見出しつつも、芝居を諦められるかの葛藤で悩みながら仕事を続ける。そして祐一には婚約者もいるので食えるかどうか、という要素は非常に大きい。この章は、将来の先行きに悩む男と、タカラジェンヌとして一歩を踏み出した妹との関係性を描いた作品。
04)星に願いを
ひょんなことから、宝塚歌劇団の裏方、大道具として主に木材を加工する職を得た原口芳樹。最初は雪駄を履いた先輩を「ダサい」と思っていたが、仕事を身につけていくにつれ色々なことが見えてくる。宝塚の舞台をさっと行って木を削ったりするには、実は雪駄がちょうどいい。
嫌々ながらも仕事を続けていくうち、後輩ができ、タカラジェンヌと知り合いになり、またお衣裳部の洋子とも知り合う。洋子も自分の力量と合わないと感じていた衣裳部に異動させられ、原口と境遇は似ていた。そういった縁が次第に原口の仕事を大きくしてゆく。そして、ついに原口が制作する舞台装置が日の目を見る。
05)コスモポリタン
長年阪急電鉄本社人事部に勤めていた鍋島浩。急な転属先に戸惑いが隠せない。宝塚歌劇団の制作と言われても・・・。先輩プロデューサーたちから言われたのは「仕事は・・・肩たたきなんだ」。
鍋島の悪戦苦闘の日々が始まる。生徒たちの力量を見て「肩たたき」をする。間違うと取り返しのつかない仕事だけに悩む鍋島。元々海外のミュージカルが大好きで、来日公演の際は際は必ず観にいっていたほどの芝居好き。しかし、宝塚歌劇は観たことがなかった。鍋島の中には、日本のミュージカルは海外のミュージカルより一段劣る、という先入観があった。ましてや女性だけの劇団なんて、という偏見もあった。しかし、仕事として国内外を問わずミュージカル、ダンス、オペラを観るうちに宝塚歌劇団のレベルの高さがわかってきた。自分が担当する組の演目も大きなヒットを出し、運動会も開催される運びに。「肩たたき」要員としてではなく宝塚歌劇団を支える者として自覚を覚えてきた鍋島に、ついに「肩たたき」をする時が来た。
06)サンク レーヴ
演出家、柴崎大輔は台本の妙案が浮かばず難渋していた。原因は、もっとも縁が深かったタカラジェンヌ=サンバさんの退団が決まったからだ。
はじめ演出の助手から入ったこの仕事は、当然思うようにいかず先輩の演出から叱咤されていた。そんな矢先、サンバさんの助言と役に対する情熱から柴崎はサンバさんを慕う。不満もサンバさんにだけは吐けた。自分が普段思っている(もっと自由に制約なく演出がしたい。宝塚の演出はトップが主役なのが決まっていて演出しても面白くない・・・等々)
柴崎は妻子持ち。家庭ではバリキャリの妻から常に不平不満を言われながらなんとか宝塚の仕事をこなす日々。しかし、阪神淡路大震災が起きる。壊れた道路、瓦礫に埋もれる街並み、自分の家も無事では済まなかった。幸い、妻と娘は実家の両親宅に居たおかげで無事だった。そして、宝塚歌劇も大きな被害を被る。あまりの被害状況から、スタッフの誰もが「宝塚歌劇・・・終わったな」と思うほどに。しかし、ファンから「絶対に復活してください。」と声をかけられ、闘志を燃やす柴崎。宝塚復活と、サンバさん退団公演のために全力を尽くす柴崎の姿がそこにあった。
07)海外専科
鍋島、柴崎、そして原口が海外にて宝塚歌劇の公演を手がける。
この作品の要素・成分 (最低値=1 最高値:10)
雰囲気
宝塚歌劇、阪急電鉄、芝居、オペラ、仕事、大道具、人事、監督、花月雪星宇、宝塚音楽学校、大阪、京都、関西弁、縦社会、スパルタ、家庭、親子、兄妹、友情、切磋琢磨、上司部下・・・。
「宝塚歌劇」を主軸とした七つの人間ドラマ。
読みやすさ:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎
実在する劇団「宝塚歌劇」に関わる男たちを描いたフィクション。それぞれの立場や仕事内容がわかりやすく、タカラジェンヌとのコミュニケーションも面白く、スイスイ読める。
ワクワク度:5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎
タカラヅカという名前は知っていても舞台裏は知らないことが多く「へえ〜!そうなんだ!」と思いながら読むので、新たな発見がある。これはヅカファンじゃなくてもワクワクする。
ハラハラ度:5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
どんな仕事でもそうだが、難局を打開できるかどうかの瀬戸際はハラハラするねぇ。
食欲増幅度:3 ⭐️⭐️⭐︎
お兄ちゃんの手料理とか、居酒屋で呑んでるシーンは和む。
胸キュン:6 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
個人的には第二話『咲くや此の花』のラストでグッときた。努力し切磋琢磨しあった娘と友達を見る父親の目線・・・。
ページをめくる加速度:8 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎⭐︎
バンバンめくります!
希望度:9 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
多くの人に支持される集団を作り上げるには、名もなき人々の弛まぬ努力が結実していると改めて分からせてくれるね。
絶望度:4 ⭐️⭐️⭐︎⭐︎
全てを捨てて打ち込んでも合格通知が来ない絶望感は想像を絶する。当事者にしか分からない気持ちだろうなぁ・・・。
残酷度:3 ⭐︎⭐︎⭐︎
スターシステムとは目に見えて人間の質、魅力が明文化される、ある意味残酷なシステムだと思う。
恐怖度:1 ⭐︎
恐怖感を感じる部分はなかった。
ためになる:5 ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎
タカラヅカの知識は多少増える。しかし、あくまで小説なので小説として読んだ方が楽しめる。
泣ける:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
各話、意外と泣けそうなポイントはある。
読後感:6 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
妻の影響で宝塚歌劇を何度か観戦したことがあるけど、この作品を読んで、また観てみたくなった。
誰かに語りたい:5 ⭐️⭐️⭐︎⭐️⭐️
タカラヅカファンはもちろん演劇関係者やタカラヅカを知らない人にも勧めやすい。仕事にフォーカスしている面もあるので、仕事小説としても読める。
なぞ度:1 ⭐️
特になし
静謐度:1 ⭐︎
皆元気にしゃべるから静謐さは感じなかった。
笑える度:3 ⭐️⭐️⭐︎
要所要所でクスッと笑えるほど。
切ない:5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
色々切ないシチュエーションがある。
エロス:1 ⭐︎
特になし。
データ
タイトル | ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚 |
著者 | 宮津大蔵 |
発行元 | 祥伝社文庫 |
コード | ISBN978-4-396-34612-6 |
まとめ
妻のために買った本で、ここまで楽しめるとは思わなかった!普段、この手の本はあまり読まないんですが、たまには良いですね!純粋に己の領分の仕事に打ち込む男たちの物語。
しかも、本作の男たちの働くフィールドが宝塚歌劇っていうのがまた特殊で面白さに輪をかけてます!妻からの受け売りですが、宝塚歌劇は阪急交通社の一部門として存在しており、タカラジェンヌは皆阪急交通社の社員扱いらしいです!加えて宝塚音楽学校を卒業しないとなれないという特殊中の特殊環境。妻に連れられて何度か日比谷の大劇場に観に行きましたが、物凄いクオリティでしたね!
歌も踊りも、もちろん芝居も観客を飽きさせないのは当然のこと、僕の周りはほとんどが女性客でしたが皆うっとりしてました〜。僕自身も豪華絢爛な舞台にとても興奮したのを覚えています。
そんな舞台裏に迫る本作ですから、とても楽しみながら読めました!ただ、演目を観ているだけでは決して知ることのできない裏話を、小説という形で、また舞台を支える男たちという視点が良かったです。本作、もしかしたら男性にこそオススメかも?
気に入ったフレーズ・名言(抜粋)
私たちは夢を売るのがショーバイですからね、あんまり小さい姿見せて夢を壊したら・・・・・・ねえ
サンバ
ヅカメン p.32
ま、ま・・・・・・万理ちゃんね、こ、こ、こっちの人ではなくてね、あ、あ、あっちの人になりたい!
万里子
ヅカメン p.94
ええ、うちの子は合格しました。でも不合格だったお友達もいるんです。どちらも本当によく頑張りました。ええ、そうです。みんな頑張ったんです。ええ、嬉しいに決まってるじゃないですか。でも、何よりも嬉しいのはお互いの健闘を讃えあうことの出来る娘に育ったことです。また、そういう友達に出会えたことなんです。そして、娘たちをそのように立派に育ててくれた先生方に出会えたことです。それが何よりも嬉しいんです・・・・・・。
万里子の父
ヅカメン p.132
そんなこと言わんといてください。絶対、復活してください。母が歌劇、大好きなんです。僕んち、壊れてしもうて母が避難所におるんです。その母が言うんです。大劇場、大丈夫やろか?家のうなってしもうたけど、歌劇さえ観たら私、元気になるんやさかいって。
ヘルメットをかぶった青年
ヅカメン p.297
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